赤と黒(上) (新潮文庫)
赤と黒(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
最初に読んだのは大学1年生の時。この作品を皮切りに次々とスタンダールを読んで、全集まで買い揃えた。当時、自分ではすっかりベーリストのつもりだったのだろう。久しぶりに読んでみて、レナール夫人とのことをどのように解釈してよいのか迷いが生じた。この後の展開も結末も知っているだけに、ジュリアンの野心と愛情との関係がなんとも難解なのだ。ヴェリエールからブザンソンの神学校に移ってからは、単線化されるだけにわかりやすいのだが。下巻ではパリへ。そしてマチルダのいるラ・モール侯爵家へと物語りは展開してゆく。楽しみだ。
2014/08/30
遥かなる想い
貧しい生まれながら、 美貌を武器に のし上がっていこうとする 青年ジュリヤン・ソレルが小気味良い。 野心に溢れる 心の底に 潜む 貴族階級への 強い憎悪…誘惑されるレーナル夫人の 純真さが 際立つ。 二人の心理描写が 意外に細かいことを 改めて 気づく、そんな上巻だった。
2018/05/03
ケイ
読むのは五度目くらい。しかし、何度読んでも、ジュリアンがなぜレナール夫人のために身を危険にさらすのかがわからない。彼が恋する男に見えないからだ。今回は、神学校の場面をとても楽しく読んだ。王政復古と、七月革命への道のりが、ストーリーの中に巧みに埋め込まれてる素晴らしさにも舌を巻く。今更ながらに、これまではジュリアン・ソレルの立身出世への欲望と不倫の恋ばかりに気をとられて正しく読み込めていなかったのだと気付いた。これら全ての伏線を回収していく後半を読むのが待てず、続けて本を手に取る。
2016/03/17
のっち♬
王政復古のために軍人を諦めたジュリアンは家庭教師先で町長夫人との不倫関係に溺れていく。時代背景や貧困下における青年の野心と自尊もさることながら、何より圧巻なのは微に入り細を穿った恋愛心理の描写だろう。青年特有の熱烈な執心ぶりも純真な夫人の揺れ動きも極めて情熱的でありながら実に客観的で分析的に描かれており、これらをこの水準で両立させた点は著者の面目躍如といったところ。「この鐘が打ち終わるまでに、この女の手を握ることが出来なかったら、部屋に帰って自殺する」—全身全霊で恋愛に身を投じて生きた著者ならではの一文。
2017/09/26
優希
スタンダールの代表作と言えば誰しもがこの作品を思い浮かべるでしょう。全編通して感じられるジュリヤンのブルジョワへの憎しみ。それは幼い頃からの虐待による暗い日々があったからに違いありません。更には最初は誘惑するつもりでしかなかった家庭教師先の夫人との恋愛に苦しむようになるのが突き刺さります。激しく根強いた憎悪と新たに抱いた情熱の中で揺れ動くのに目が離せなくなりました。様々な要素や想いが絡み合い進む物語。下巻も読みます。
2017/01/14
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