白痴(上) (新潮文庫)
白痴(上) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ハイク
ドストエフスキーは2作目である。主人公ムイシュキン公爵は幼い頃病気を患った。一種の神経症である癲癇の治療のためスイスの有名医者にかかった。症状は知能が普通の人より劣るとの事であるが、読む限りそのようには見えない。ある程度良くなり故郷のロシヤに戻る途中に、列車の同じ座席にロゴージンがいた。これが縁で以後長い付き合いとなった。上巻で圧巻なのは主人公が癲癇を起こした前後の彼自身の心情をかなりの頁を割いて吐露したことだ。正にドストエフスキーの真骨頂であると思う。これだけの心理描写を書き著した作家の数は少ないだろう
2016/11/02
よむよし
ドスト作品はロシアの土地、信仰、文化、習俗等にドップリ浸かっている人にしか実感できないのかなと思います。また登場人物は著者の意図を象徴してるだけでそれ以外の個性は抹消されてるような印象がありますが、この作品の主人公は現代に出現したイエス・キリストという設定なのでいろんな人間臭さを持つよりも象徴性が突出してるほうが逆にハマってるみたい。主人公の心の美しさはどうみても現代社会に合っておらず回りからバカにされ続けます。ロシアの刑務所で人気No.1書籍だったのも納得しました。ドストの中で一番好きな作品。
2023/12/22
のっち♬
療養を経てロシアに戻ったムイシュキン公爵は美貌のナスターシャを巡ってロゴージンとライバル関係に発展する。「すべての人に対して丁寧で、正直で」あろうとする公爵は周囲から「おばかさん」呼ばわり。癲癇持ちで処刑前の心理や平凡であることの屈辱感などを訴える彼には、繊細な感受性を持つ著者の苦悩が仮託されている。本作の透明感を引き立てるのは公爵を通して炙り出されるロシア人の心の闇。構成も複雑化し、重厚感がある。「宗教的感情の本質というものは、どんな論証にもどんな過失や犯罪にも、どんな無神論にも当てはまるものじゃない」
2018/09/22
扉のこちら側
2016年373冊め。【185-1/G1000】スイスの療養所から帰郷したムイシュキン公爵は、疑うということをせず、思ったことをすぐに口に出す「空気の読めなさ」故に周囲の人々の気持ちを波立たせる。何かで読んだのだが、ドストエフスキーの創作メモによると、このムイシュキンについて「無条件に善良な人間として描くこと」とあったそうだ。確かにそういう描かれ方はされているが、なんだか俗世間の荒波に揉まれていないからか、確固とした存在感がないようにも感じる。作中に多量のアネクドートあり。下巻へ。
2016/06/05
青蓮
ずっと気になってた作品で、今回ようやく手に取りました。相変わらず登場人物が多く、人間関係も複雑で、メモを取らないと置いてきぼりを食らうかも。純粋無垢であるがゆえに周囲から白痴(バカ)と謗りを受けるムイシュキン公爵。先に読んだ「罪と罰」はどす黒さを感じたけれど「無条件に美しい人間」をテーマにした本作はムイシュキン公爵の人柄もあってか、ドストエフスキーが持つ「毒」は薄めかな。ただ、公爵を取り巻く人々の狂乱が凄まじい。ムイシュキン公爵、美貌のナスターシャ、ロゴージンの三角関係はどう決着がつくのか。さて、下巻へ。
2016/03/06
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