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白痴(下) (新潮文庫)

白痴(下) (新潮文庫)

白痴(下) (新潮文庫)

作家
ドストエフスキー
木村 浩
出版社
新潮社
発売日
2004-04-01
ISBN
9784102010044
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白痴(下) (新潮文庫) / 感想・レビュー

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のっち♬

ロゴージンの家に飾られている苦悶の表情を浮かべたキリストの絵画は本作のテーマを象徴しているようだ。絵を巡る冷え冷えとした二人の会話や公爵やイポリートの熱感を帯びた長広舌など、著者の思索はより色濃く現れてくる。ガーニャの痛々しい平凡さは作中最も現代的な苦悩かもしれない。通夜の美しさは絶品。つくづく人物設定の妙が光る傑作。人々が求める「完全」は現実世界と決して相入れるようなものではない。並外れた性質ほど、本人にも周囲にも過酷な選択や運命を強いるのだ。「問題は生き方にあるのだ。絶え間なき永遠の探求の過程にある」

2018/09/25

ハイク

著者は「白痴の主題」を語っている。「完全に美しい人間を描く」ことであり、それは主人公のムイシュキン公爵であり「キリスト」の化身である。登場人物の多くから好かれる言わば人畜無害な人として描いたと言う。読んでいくと登場人物の心理描写が微に入り細に入りこれでもかと綴られる。登場人物が多く個性的な人ばかりである。彼、彼女等との主人公とのやり取りも面白い。世界最高の小説と評する人もいる。結末は全く想像できなかったが、著者の意図からすると成程と思う。「罪と罰」に引き続いて読んだがドストエフスキーとは奥深い作家である。

2017/01/08

ケイ

「無条件に美しい人間」時代はロシア革命前。貴族の俗さや拝金主義的な考え方が蔓延していたのだろうか。その中で作者が無条件に美しいと思う人はムイシュキンとなって現れた。確かにムイシュキンに穢れはないが、それはかき乱す。彼に振り回された美しい女性二人の運命に一番同情したのは、エヴゲーニィ・パーヴロヴィチ・ラドムスキー公爵であろう。俗な人間ではあってが、冷静さと情とを備え持ち、ムイシュキンの美しさを理解し、ムィシュキンがいなければ穏やかに暮らすことができた人々の不幸について心を痛められたのだ。

2015/11/12

扉のこちら側

2016年374冊め。【185-2/G1000】下巻に入って気づいたのだけれど、これは恋愛小説でもあったのだな。無垢な美しさは、しかし必ずしも周囲の人間を幸福にするとは限らないのかもしれない。しかし「白痴」なのは公爵だったのか、それとも…。なお、上巻の感想で書いた、出典がおぼろげだった「無条件に~」のくだりは、下巻のあとがきにあった。​

2016/06/05

青蓮

上下巻合わせて約1400頁の大作。とても密度の高い作品でした。正直、話の筋を追うのに精一杯で、此処で書かれている思想などにつては理解が及ばず。当時のロシアの社会的背景、キリスト教などの知識があればもう少し違った読み方ができたのかなと思います。純真無垢なムイシュキン公爵は博愛の人だった。それは時として残酷な結末を引き起こし、生きていくことさえ困難にする。「白痴」と呼ばれたのは実はムイシュキン公爵ではなく、寧ろ彼の周りにいる人々だったのかもしれない。また時間をおいて再読したいと思います。素晴らしい作品です。

2016/03/07

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