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地下室の手記 (新潮文庫)

地下室の手記 (新潮文庫)

地下室の手記 (新潮文庫)

作家
ドストエフスキー
江川 卓
出版社
新潮社
発売日
1970-01-01
ISBN
9784102010099
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地下室の手記 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

ジィドはこの作品を「ドストエフスキーの全作品の鍵」と評した。たしかに、ここを大きな転換点として、『罪と罰』以降のドストエフスキーの代表的な長編小説が生み出されている。それでは『地下室の手記』の意味するものは何なのか。それは思索にあるのだろう。自己の内部に遡行し、徹底的に自己自身の存在の意味を問い直すことにあったのだと思う。したがって、それは一見したところ、きわめてエゴイスティックな様相を取らざるを得なかった。しかも、いたって観念的にして抽象的である。それが物語の姿を纏って飛翔するのは、まさにこの後だった。

2016/06/11

遥かなる想い

ひどく捻れた男が書く手記 である。屈折した感情を 理解できないわけではないが、 共感はできない。 意地悪な40歳の元役人を 通して、著者は何を描こう としたのか。 延々と続く退屈な独白は 独りよがりで、嫌気が 差すだけなのだが… 社会に対する屈折した 不満・諦め・怒りを 描こうとしたのだろうが… リーザとの関わりも 屈折し過ぎて正直、 混乱する…そんな本だった。

2015/11/03

ehirano1

これはまたとんでもなく凄い本にぶち当たりました。承認欲求を拗れに拗れ散らかした「闇堕ちした無敵の地下室の住人」の長めのブログ。自分の地獄を無限に作り出し、苦しみ抜いた先に到達したモノは大変興味深いというか、もはや学会で発表できるレベルではないかと思う程でした。

2024/09/13

のっち♬

社会と訣別して地下室に閉じこもった元官吏の手記。過剰な自意識に苛まれた彼を通して、文明により多感になった現代人の本質を「ギリギリのところまで押しつめ」てみせる。人間はいくら合理化を進めても「自分独自の恣欲」を求める存在だとするこの独白は深刻で濃密。第二部は自尊と卑屈を抱えた彼のとる不利益な行動で人間の非合理性を例示する。彼の滑稽なまでの不器用さを終盤では悲痛に演出する筆致は圧倒的な迫力と生々しさがある。「安っぽい幸福と高められた苦悩と、どちらがいいか?」この憤怒と絶望の叫びは、今なおその余命を保っている。

2018/07/25

まふ

極端な過剰自意識を持て余しつつ世の中すべてを自分の許す範囲内でのみ規定し世間から閉じこもる。一旦外界に出ると常に自分を意識し相手のすべてを否定的に捉えて自らの世界を狭めて身動きの取れない自縄自縛状態に陥る…。人間だれしも似たような自己意識を感じる時があるだけに、主人公の自ら出口を塞ぐ自閉状態は読んでいてつらい。友人たちに自らバカにされに行く「心の自傷行為」や娼婦のタマゴのような女の純情を破壊しなければ納得できない自己矛盾…何度も繰り返して読むべき一書である。G464/1000。

2024/03/14

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