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死の家の記録 (新潮文庫)

死の家の記録 (新潮文庫)

死の家の記録 (新潮文庫)

作家
ドストエフスキー
工藤 精一郎
出版社
新潮社
発売日
1973-08-01
ISBN
9784102010198
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死の家の記録 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ケイ

序章で語られるゴリャンチコフの暗さと、彼の手記の内容が結びつかない。最後まで読んで序章に戻る…。 当時の状況を知らずば、この唐突感は分からないのだ。検閲を受けて、やっと発禁をとけたこの収容所の体験談は、実際のつらさの上澄みでしかない。少し滑稽でもある男達の、本当の生活の過酷さを、行間から深く想像しながら読まねばならぬ。共喰いさえあったという収容所の中。そこから生き延びて帰ってきた作者の手になる書。ここで真実が語りきれていないことを嘆く必要は無い。その体験が、彼に大作をいくつも書かせたのだろうから。

2019/07/13

さゆ

ドストが思想犯として死刑宣告された後、恩赦によりシベリア送りになったときに書かれた手記をまとめたもの。たびたび死刑囚をはじめ囚人の権利について言及されている。今でこそ情状酌量されているが、自分の利益のために殺人をした人と誰かを守るために殺人をした人が同じ刑務を強いられていいのかといったドストの思想的支柱を知ることができる。こういう声を上げた人がいるからこそ、今の世の中があるんだなぁと感じられた。

2023/12/05

のっち♬

「人間はどんなことにでも慣れられる存在だ」地主出身の語り手による獄中体験記録。悲惨な生活環境、過酷な労働、民衆の多様な人物像など観察眼や精緻な描写が圧巻。周囲の敵意に苦しみつつも「一切の偏見を捨てて」「予想もしなかったようなものを見出」した著者にとって服役は実り多い学校だった。囚人とて自由を渇望する人間。したたかな生き様や笑いに温かい眼差しを向ける一方で、刑罰制度を辛辣に批判する彼のヒューマニズムも窺われる。暴虐の習慣性、目的や意欲の必要性など人間本質を追求した考察も印象深い。現代は誰もが刑吏で囚人なのだ

2018/06/22

ももたろう

ノンフィクションと言っていい獄中記。囚人や看守の外面のみならず内面まで細かく観察し、それを極めて写実的に描いている。ドストエフスキーの天才的な洞察力が伺い知れる。この本を読むことで人間とは何か?を考えさせられる。人間の集まりだから当然だが、監獄は人間社会の小さな縮図だと感じた。またこれは感想というか意気込みになるのかもしれないが、この本を通じて「観察力」を高めていきたい。それほどまでに、ドストエフスキーの細かく綿密で恐ろしいほどの洞察力が窺い知れた。

2016/08/14

Gotoran

ペトラシェフスキー事件(1850年)で逮捕され死刑を宣告されるも刑場で刑執行直前恩赦でシベリア流刑になったというドストエフスキー。4年間送った監獄での実体験がベースの本書。特に話の筋はなく、まさに監獄生活の記録。囚人達の言葉遣い、会話、詩、監獄の歌、更に様々なエピソード、情景、事件、囚人の告白など。監獄内の生活風俗、囚人達の性格描写、身の上話的なエピソード。緻密な観察者の目を通して、まるで鏡に映るかの如く再現するかのように描かれる。ろくでもない囚人。その中に何の異常もない、普通の人間も。↓

2014/01/07

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