ファウスト(一) (新潮文庫)
ファウスト(一) (新潮文庫) / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
この作品の特長は、人間を惑わす二つの悪を描いているところにある。一つの悪は、メフィストーフェレスに代表される現世的な悪で、もう一つの悪はファウストの中にある自己中心的な悪である。一見ファストは悪党に見えないが、自分の力のみで知の世界を突き詰めていこうとする態度には、他人に対する配慮は少ない。メフィストーフェレスを、ゲーテは単純に悪魔的な存在として描いているのではない。この詩劇を読んでいると、読者もこの悪魔が憎めない存在として感じられる箇所がある。この悪魔的な存在は、私達の胸の内にも住んでいるのだ。→
2016/09/29
優希
壮大な物語の幕開けといった印象を受けました。理想と現実の乖離で悩むからこそファウストはメフィストーフェレスによってこの世を見直す機会を与えられたのだと思います。その代償は魂という大きなものでしたが、それ故に若返り、恋をすることになったのでしょう。悲劇の幕開けと共に、強い意志を信じる人間の姿を重みをもって描いているように感じました。第二部も読みます。
2018/04/16
アナーキー靴下
再読。戯曲形式であり、第一部はグレートヒェンとの恋愛話がメインであるため、まるでシェイクスピア悲劇のよう。高校時代に読んだときは、花占いをするグレートヒェンの愛くるしさ、そして鮮烈過ぎるファウストとの別離に、目まぐるしく心を突き動かされ、しばらくこの物語のイメージから抜け出せなかった。しかしこの後第二部がどんなものかぼんやり覚えている中読むと、ファウスト=のび太に思えてくる。ドラえもんたるメフィストーフェレスがやって来なければ何も起きなかったとはいえ、起きた出来事は全部のび太のせい。少しは自省して欲しい。
2021/08/29
syaori
「己は自分の心で、全人類に課せられたものを/じっくりと味わってみたい」。学問を究めても結局「何も知ることはできぬ」ことに絶望するファウストは我が魂を賭け悪魔に望む。受けて立つメフィストーフェレスがまず彼を導くのは「小世界」(平民社会)。そこでファウストは可憐な少女グレートヒェンに恋をし、その秘密の恋によって彼女を破滅させてしまいます。「人類の幸福と苦悩とを己の胸で受けとめてみたい」と言っていた彼の心は、目の当りにした彼女一人の「悲惨」に苦悩する。この苦悩はファウストに何をもたらすのでしょう。第二部へ。
2020/05/26
NAO
第一部の最初の悪魔との契約や、第二部で伝説の美女ヘレネを追い求める部分などは16世紀後半のドイツに流布していた「ファウスト伝説」を基にして書かれているが、「グレートヒェン悲劇」はゲーテのオリジナル。ゲーテがグレートヒェンの魂が最後の贖罪によって救われるという話を加えた意図はなんとなくわかるような気もするのだが、下巻では、そこまでに至る過程が見どころとなっていくのだろう。これからファウストがどう変わっていくのか、楽しみだ。
2017/10/23
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