モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集II ミステリ編 (新潮文庫)
モルグ街の殺人・黄金虫 ポー短編集II ミステリ編 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作を含めて6篇の作品を収録。こちらは概ね推理小説のジャンルに入りそうだ。いずれも再読なので、肝腎の部分は周知しているのだが、ポーの作品の妙味はトリックにのみ依存しているのではないことをあらためて思う。「モルグ街の殺人」(1841年)は、密室殺人(不可能犯罪)のまさに嚆矢であり、ディクスン・カーをはじめとして、これ以降陸続とこうした作品群が書かれることになる。また、「黄金虫」は暗号解読という、これまたその後の推理小説の王道の一つを開拓した記念碑的な作品。それぞれの探偵(ことにデュパン)も魅力的。
2022/08/15
パトラッシュ
『モルグ街の殺人』にある「独創性とは空想的なもので、優れた想像力は分析的なもの」との一節は、ポーのミステリ論そのものだ。デュパンが異常な殺人事件の犯人を突き止め、盗まれた手紙の隠し場所を推理できたのは常識に囚われない分析的想像力の結果だろう。黄金虫に秘めた暗号解読だけで立派な小説が成立すると証明できたのも、誰の真似でもない真の独創的な文学の先駆者たり得たからだ。『群衆の人』のマジックリアリズム的要素や、黒人リンチが普通の時代に『ホップフロッグ』の恐怖は鮮やかの一言。作家のオリジナリティーの高さに納得する。
2024/06/08
mae.dat
表題2作を含む6篇からなる短編集。何だろう。本も厚くはない上に、短編なのですけど、何とも読み辛く、思う以上に時間が掛かってしまいました。表題2作は、小学校の図書室にあり、読んでる気がしていたのですけど、全然思い出せなかった。『モルグ街の殺人』については、犯人を流石に覚えていたと言うより、知っていた感じですけど、それ以上に猟奇的でびっくり。小学生向きには、マイルドに仕上げてあったのでしょうか?それに、当時の人々は犯人像に、どれ程の知見が備わって居たのかも気になる所です。
2021/05/12
nobby
今さらながらポー作品初読み。史上初の推理小説と初の暗号解読小説を堪能、こんな秀作が19世紀半ばにもう書かれていたことが驚き!「モルグ街の殺人」その驚愕かつ有名な犯人を幸い知らずに読めてよかった。細かく論理的に検証していての結末がスゴい!「黄金虫」終盤までの予想だにしない宝探し展開にビックリ!?登場した暗号が、かなり本格的でまた驚いた(笑)英語ならではの解読方法は知っていたが解き明かす様にはドキドキ。「おまえが犯人だ」「ホップフロッグ」など序盤から怪しい人物達がラストで成敗されるのも分かりやすくて好きだな♪
2019/02/24
zero1
ミステリーはここから始まった!歴史に耐える作品には理由がある。ポーは19世紀の作家だが、今でも本書の内容は立派に通用するどころかドイルや乱歩の原型だと考えれば、価値はとても高い。「モルグ街の殺人」はデュパンと友人が夫人と娘の殺害事件を追う。「まだらの紐」(ドイル)を思い出す。「盗まれた手紙」もミステリーのモデルとしてあまりに有名。宮部みゆきも作品の中で用いている。常識に囚われず視点の変化が事件解決のカギ。謎を解くには今までにない方法こそ求められる。「黄金虫」は乱歩のデビュー作「二銭銅貨」を思い出す。
2019/10/28
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