結婚式のメンバー (新潮文庫)
結婚式のメンバー (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
本書はカーソン・マッカラーズの半ば自伝的な小説ということなのだが、だとすれば、さぞや彼女は生きにくかっただろうなと思う。時代や状況は全く違うものの、太宰の世間との違和と近いものを感じる。そして、同時に生まれの宿命をも思うのだ。彼女はアメリカ南部、ジョージア州で第二次大戦に向かう頃に思春期を過ごす。南部の倦怠とニューヨークやシカゴへの強烈な憧れもまた、この小説には濃厚に投影されている。憧憬と煩悶と閉塞と、もはやキリがないほどの混沌こそが、この小説の神髄だ。そして、12歳という早熟もまたキー・コードだろう。
2016/04/03
KAZOO
私はマッカラーズという作家はまるっきり初めてなのですが、皆さん結構読んでいて、新訳を待っていた人が多いとのことのようです。私は柴田さんが訳したサローヤンを読んだのでこのシリーズを読んでみようと思いました。多感な少女の心やその少女とのやり取りをする人々、特に人生経験豊かなベレニスとの交流に惹かれました。
2016/06/14
ムッネニーク
73冊目『結婚式のメンバー』(カーソン・マッカラーズ 著、村上春樹 訳、2016年4月、新潮社) 米の女流作家カーソン・マッカラーズが1946年に著した作品。著者の自伝的要素が多分に含まれており、田舎街での生活に倦む12歳の少女の、広い世界へ旅立つ事への渇望が生々しく描き出されている。 狂気的と言っても良いほどに暴走してしまう彼女の様は痛々しいが、そこには我々読者も経験した、過ぎし日の相貌がある。 「あたしたちはいろんなことを次々に試してみるんだけど、結局は閉じ込められたままなのさ」
2023/08/02
抹茶モナカ
12歳の思春期の少女の兄の「結婚式」への特別な思い入れ等、繊細な心情を描いた長編小説。自分は特別な存在だ、と、思った事の思春期を通り過ぎた人なら感じる部分はある作品だろう。ちょっと常軌を逸している部分があって、そこがよくある思春期の物語と違う部分であり、マッカラーズの過ごした思春期の特徴なのだろう。読んでいて、少し、落ち込んでしまったのは、僕自身の思春期を思い出したせいか。マッカラーズ作品の特色なのか。また、全く別の理由か。ちょっと、わからないけど、落ち込んだ。
2016/04/19
はたっぴ
『緑色をした気の触れた夏のできごとで、フランキーはそのとき十二歳だった』こんな書き出しで始まる物語には、少女の思い出が詰まっている。彼女が多くの時間を共にするのが、ベレニス(黒人の料理人)とジョン・ヘンリー(6歳の従弟)。年齢の異なる3人の食事風景と交わされる会話が妙にチグハグだが、家族のような親密な時が流れてほのぼのと温かい。フランキーが「もっと自由になりたい」ともがいてジタバタする姿は尖ったナイフのように危なっかしく、思春期の複雑な感情をもて余した少女の瑞々しい成長記として楽しめた。【G1000】
2016/05/15
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