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完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)

作家
D・H・ロレンス
David Herbert Richards Lawrence
伊藤整
伊藤 礼
出版社
新潮社
発売日
1996-11-22
ISBN
9784102070123
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完訳チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

本書は1950年から7年間にわたって「猥褻」をめぐって法廷で争われた。いわゆる「チャタレイ裁判」である。はたして何が問題であったのかわからない、というのが現代の感覚だろう。エロティックではあるものの淫靡なそれではなく、いたって健康的で明るい性の礼賛であり、コニーにおける解放の物語である。彼女と夫のクリフォードとの価値観の違いも決定的である。クリフォードは貴族階級に属し、今は炭鉱を経営する産業資本家である。彼には労働者は被支配者でしかない。コニーはそうした世界観からも脱却を図るのである。また、ここに⇒

2016/02/07

ケイ

『ヴィガン波止場への道』でオーウェルは第一次大戦後の炭鉱町の酷い暮らしを描いていた。そういった炭鉱の所有者がチャタレイ氏だ。オーウェルは、社会主義を推奨する中産階級でも、実際には労働者と一線を引く。ロレンスがこの作品で描くのは階級の問題。女性の扱われ方。性的な行為は女性の自立のメタファーで、そこを注視すると提起されている問題が見えなくなる。チャタレイ氏は、妻を世話人として罪悪感を持っていなかった。チャタレイ夫人の恋人は、労働者で、鍛えた身体は美しく、粗野だが教養もある。世間は結局彼らの敵になるのだろうか。

2021/10/03

のっち♬

「現代は本質的に悲劇の時代である」—下半身不随の夫に他の貴族の男と跡継ぎを作れと言われたコニーは労働階級出身の森番と恋に落ちる。階級社会が根強い英国の社会背景や思想が仔細に描かれ、物議を醸した性描写はあくまで現代の愛の欺瞞を暴くプロセスの一環。詩情豊かで粘着質な表現が、肉体の生活と自分の恋愛に目覚めていく女性の内面を描き出すことに貢献している。肉体と精神、金銭と階級に対する様々な対比を織り交ぜた文明批判を通して「生」と「性」の本質を繋ぎ合わせ、肉体的意識のふれあいと優しさのために戦う著者の気迫に圧倒された

2021/02/16

はたっぴ

「チャタレイ事件」は歴史上の出来事として認知していたが、ひょんなことから作品を薦められ、いつも以上に時間をかけて堪能した。これは濃厚な愛の物語であると同時に、著者の思想家としての社会批判が込められた文学作品だと思う。主人公である有閑階級夫人のコニーと森の番人との性描写の美しさは言うまでもなく、自邸の庭園や森の自然描写も細やかでうっとりするほど神秘的。社会的な階級により分断された人間像を巧みに捉え、支配者階級への批判や工業化への懸念も盛り込まれている。長編作品として飽きることなく充たされる内容だった。⇒

2016/04/24

NAO

過激な性描写というよりは、人間関係の歪さがとても気になった。自分が障害者と関わることが多いためか、戦争で障害者となった夫の精神的肉体的苦悩があまりにも軽く見られすぎているようで引っかかることが多く、夫人のことをよくは思えなかった。五体満足な夫だが、生来の偏屈さ・時代錯誤・女性蔑視が原因で夫人の心が夫から離れたというのなら納得もいくのだが、彼の悪しき部分がすべてが障害に起因し、障害を持った夫は悪で夫人はそこから自由になっていいというような描かれ方をしているのは、どうにも嫌な感じだ。超個人的な感想ですが。

2016/07/19

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