ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)
ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
19世紀末イギリスの正統派耽美小説というべきか。優雅な住まいに、美と芸術的享楽に耽溺する高踏的な生活。中心にいるのは希代の美青年ドリアン。そして、ヘンリー卿と画家のバジル。もちろん、そこには馥郁たるゲイの香りが立ち込める。ドリアンはシビルと婚約していたって?彼が愛したのは芸術家としてのシビルであって、女性としての彼女ではない。だからこそ、いとも簡単に破棄できるのだ。彼が愛するのは美―しかも自身の美だけなのだから。したがって彼の恐れるのは美のゲシュタルト崩壊のみ。彼はいわばそれに殉じたのだ。⇒
2016/02/01
遥かなる想い
1891年に書かれたこの本、 なぜか三島由紀夫を感じた のは、気のせいだろうか。 美貌の青年ドリアンを めぐる人間関係の構図は、 古典的で懐かしい。 快楽主義のヘンリー卿の 影響を受け、悪行を 重ね、若さを浪費する ドリアンの風景はひどく 演劇的で、舞台で 台詞を語り続ける役者の よう…老いと若さ、 汚れゆく魂…著者が この全く魅力的のない 「ドリアン」を通して、 描きたかったものは 何だったのか?ヘンリー卿 の立ち位置だけが、 面白く感じる、そんな物語だった。
2015/09/12
ヴェルナーの日記
19世紀の世紀末を生きたワイルドの作品。古典でありながらも、本作の魅力は色褪せることがない。主人公ドリアンの変わりに醜く老い続ける肖像というプロットは、とても興味深いといえる。ただ、19世紀末における背徳で、禁断の悪の所業とは、21世紀の現在において、さほど悪徳とはならないかもしれない。ワイルドが現代に生きていたとしたら、どんな『ドリアン・グレイの肖像』を描き出したのであろうか?
2014/08/14
nuit@積読消化中
私には倫理性やら宗教性、芸術至上主義とか難しいことは語れないのでさておき、物語はもちろん、19世紀ロンドンを知る上で非常に面白かった。しかしヘンリー卿、本当にうるさい(笑)。常に逆説を論じるし、それにまたすぐに感化されるドリアン(笑)。ピュアすぎて美しい。しかし、こんな怖しい結末を迎えることになるとは。オスカーは「幸福な王子」「カンタヴィルの幽霊」など短編しか読んでませんでしたが、良質な作品の描き方に引き込まれます。
2021/10/02
星落秋風五丈原
【ガーディアン必読1000冊】ヘンリー郷の前ではドリアン愛を公言しているバジルは当人の前ではドリアンのヘンリー郷愛があまりにも強くて、次第に何を言っても聞いてもらえなくなる不憫なキャラクター。ならばこれほどドリアンを翻弄するヘンリー郷に彼への愛があるかと言われれば疑わしい。結局は一方通行の片恋の物語であった。肖像画に全て悪が移り、本人は相変わらず若く美しいままなのはよく知られているストーリー。形を変えたジキルとハイドの物語とも言える。
2020/03/19
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