風と共に去りぬ (4) (新潮文庫)
風と共に去りぬ (4) (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
フランクとの結婚後、スカーレットの情熱は事業に向かう。夫のフランクはおろか、アトランタの上流婦人たちのほとんどすべてから眉を顰められながらだ。しかも、彼女は、共同経営者と言えば聞こえはいいが、アシュレをも実質的には自分の事業に組み込んでいく。1860年代の南部ということを考慮するならば、逸脱をはるかに通り越した所業だ。この小説が書かれた1936年にしても、時代を超越した女性だっただろう。物語の中での寵児たるメラニーとはきわめて対照的な存在だ。この2人は、逆境に対する向かい方が決定的に違っているのである。
2018/12/16
ケイ
南部白人の戦争後の状況から、KKKの誕生の経緯が説明される。昨日まで自分達の奴隷であったものを使うのに賃金を払わねばならない。しかし彼らは日銭を手に入れると仕事に来なくなる。昔のように働かせようとムチをあげれば、パワハラだと差別だと北軍に訴えられ罰せられる。クッツェーの『恥辱』に描かれた社会の状況変化についていけない白人教授を思い出した。そして、解放者の妻達は初めて見た黒人を嫌悪する。ヤンキー達は南部の白人と黒人の関係を誤解している…等々、作者はスカーレット達を通して書いているのだが、それは欺瞞にも思える
2017/10/04
のっち♬
妹の婚約者と再婚したスカーレットは製材所経営に乗り出す。その抜け目ない商売の勘が必要によっていよいよ鋭く研ぎ澄まされ、新時代との新たな戦いが幕を開ける。北部の圧政と解放奴隷の横暴に南部が苦しみ対抗する時代背景が描かれ、その渦中は血の匂いが立ち込める。「人間には、それぞれしなければならないことがあるんです」逼迫した状況に動じないメラニーが要所で話を動かす様が印象的で、他人と理解し合わずに孤立するスカーレットとは徹底して対照的に描かれ、両者の存在が際立っている。どの人間関係も複雑だがこの二人のは特に惹かれる。
2020/07/22
GAKU
前巻まではスカーレットの強い生き様に共感も覚えたが、ここまで金儲けに徹するスカーレットにはちょっと怯む。夫も子供も可哀想。そして毎回感想で述べているが、やはり彼女がアシュレに惹かれる理由がわからない。今回で益々アシュレの不甲斐なさが。あとここまで読んできて、南北戦争当時の時代背景。南部の人々にとって黒人奴隷というのがどのような存在だったのか。奴隷開放のために戦った北部の人々は、実はどのように黒人の事を見ていたのか。さらにKKK団の発生等々主たる物語以外の部分も面白く読める。⇒
2021/10/12
NAO
なぜか商才があって行動力抜群のスカーレットと、静かで冷静だけれど芯が強くいざというときにスパッと決断するメラニー。作者は正反対の二人を見事に描き分けているが、メラニーは南北戦争後の女性の理想の姿、スカーレットは戦後の最先端を行く女性の姿だったのだろうか。アシュレは相変わらず冴えないが、南部には、彼のように過去の尊厳に縛られたまま何もできない無為の人も多かったのだろう。アシュレの数十年後の姿と、フォークナーのヨクナパトーファ・サーガに出てくる失意の老人たちの姿とがかぶって見える。
2016/01/13
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