若い芸術家の肖像 (新潮文庫 シ 3-2)
若い芸術家の肖像 (新潮文庫 シ 3-2) / 感想・レビュー
遥かなる想い
1916年に書かれたこの本は スティーヴンの少年期から 青年期にかけての 成長を静かに描く。 淡々と続く独白を読んで いるとなぜか懐かしい気が するのは、昔読んだ本の トーンとどこか似ている からなのだろうか。 ひどくキリスト教的な 展開は日本人には理解 し難いが、逆に雰囲気は 素直に味わえる、そんな 本だった。
2015/10/12
NAO
少年期から大学に通っている20歳までが5章に分けて描かれ、それぞれの章は、スティーヴンの成長に伴って、少年っぽい幼い文体から深い思索をする青年の文体へと変化していき、その中に、子ども向けの童話、民謡、祈祷文、詩、手紙といった様々な文章表現が織り込まれている。さらに、ジョイスは、ダイダロスの英語名をスティーヴンの姓にすることで、この作品を、ただの自伝小説ではなく神話の枠にとらえて描いた。スティーヴンは芸術家を目指す青年でしかないのだが、それでも、彼のこの固い意志は、なんとすがすがしく、なんと孤独なのだろう。
2017/09/27
ω
ユリシーズ読んでみたいけどムズそうだな…ふむ、こちらが入門編なのね( ^ω^ )🌟 ということで読み始めました。 序盤は主人公スティーブンも小学生らしい平易な文章で、事件も起きたりして面白く読んだ。中盤、中高生もまだついていける……。彼が大学に入った最後の五章にて、倍生きてる私の遥か上を飛んでいった🕊️ ぼくは一人きりになることを恐れていない。他人から追い払われることを恐れていない。力強いぜ〜ω
2023/06/11
ykshzk(虎猫図案房)
目で文章を追ってはいるが、全く頭に入ってこない。戻って読み返すが、また入ってこない。そんな行きつ戻りつを繰り返し、図書館の返却期限をオーバーし、何とか読み終えたが修行のようだった。主人公の、子どもから青年へと変化していく濃厚な時間経過と背景にある政治・宗教の世界観、2週間で全く読みこなせない自分の拙さを痛感するばかり。ユリシーズに行くまでにまだまだ時間や勉強が必要だ。ただ「美しいとは何か」の議論など、時に集中して読める箇所に助けられ読み進んだ。時間を置いて、再読必須。解説で分かったのは、日本語訳の大変さ。
2018/06/25
Э0!P!
詩的な表現でいっぱいのジョイスの半生の随想録風小説。イエズス会の厳しい教義のもとで幼少期を過ごした後で、罪を犯し、神を不審に思い、再考の機会を捨て、愛の飢えと美の追求に連なる孤独の道を感受する。それは以前見たときには地獄に連なる道でもあった。幼少期、宗教、愛、家族、国、あらゆるものとの断絶を恐れず進む姿は、もはや芸術家のたどるべき矜持に満ち満ちた人生として一般化されるべきものであり、同じ志を持つ者たちの胸を熱くさせ、美と信仰の道に投企していく勇気を与える。
2024/03/17
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