夜の樹 (新潮文庫)
夜の樹 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
主としてカポーティが20代の時に書いた短篇小説9つを収録。長編の『ティファニー』などとは随分趣きが違う。訳者も解説で指摘しているが、内向的、内面的な作品が多い。巻頭に置かれた「ミリアム」などは、典型的なそうした小説であり、自己の奥深くに内在する、もう一人の自分と向き合う物語である。また、いずれの物語も多かれ少なかれ、孤独な生をテーマにしており、それは時には少年の悲しみであったりもする。どの作品を採るかは好みの分かれるところだろうが、私は「銀の壜」の持つそこはかとない憂愁に強く魅かれるものを感じる。
2014/09/09
のっち♬
主に20代で執筆された短編9篇。不確かな現実認識、都会の孤独、狂気など人間の非合理性への拘りは本書でも通底している。こうしたテーマとゴシックやシューレアリズムとの相性は代表作『ミリアム』『夜の樹』にはじまる前半5篇で体現され、ドライな筆致が不衛生な車内、奇怪な絵画や人物への感興、密室の閉塞感等をグロテスクに描き出している。一方で『誕生日の子どもたち』以降4 篇はイノセントやユーモアが飛び交う開放感と包容感のある話。妻のおばからの罵りは自虐的。スモールタウンと大都会双方に文学的故郷を持つ著者の早熟が伺える。
2023/01/23
buchipanda3
初カポーティ。最初の数篇を読み、こういう作風だったのかと少し驚いたが、読めば読むほど物語が醸し出す雰囲気に取り込まれていく面白さがあった。何というか無垢な心が孤独や合理性といった現実に怯え、それを認めたくないかのように幻想的かつ文学的な空想癖を曝け出している感じ。その描写がまた流麗で惹き付ける。終わり方も油断ならない。夢から醒めても得も言われぬ後味が残る。「銀の壜」や「感謝祭のお客」などは違った味わいだがまた良い。解説でアラバマとNYという著者の二面の由来を知り合点。それでも無垢なるものが両面で見られた。
2020/12/14
ケイ
なかなか読み進められなかった。かなり気が滅入ってきてしまって。気温の寒さと同時に何ともいえないぞっとする感覚に襲われた。
2014/08/14
コットン
『ティファニーで朝食を』とも『冷血』とも違う9編の短篇集。その中でも初めから3編までが特に印象的。『ミリアム』:ある意味一人住まいに付きまとう恐怖、『夜の樹』:逃げても逃げられない感覚『夢を売る女』:夢を売ることの楽しみと怖さ
2018/04/12
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