嵐が丘 (新潮文庫)
嵐が丘 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
高校生の時以来久しぶりの再読。700ページに及ぶ大作なので、なかなか佳境に入らないのだが読了してみると、しみじみとした感慨にふけることになる。ヒースの散在する北イングランドの荒涼としたムーア。姓も名も不明のままのヒースクリフという墓碑銘。この作品もまた、燦然たる孤高の中にある。語りもまた独特だ。基本的にはネリーの回想で語られるという、いわば間接話法によるリアリティのあり方。あまりにも濃密な関係性。凝縮された小説世界―どれをとっても、ここにしか存在しない世界だ。物語の空間に耽溺できる固有の時間がここにある。
2013/11/05
遥かなる想い
〈嵐が丘〉を舞台にした ヒースクリフと キャサリンの恋の物語だが、改めて読むと ヒースクリフの執念深さだけが際立つ。 彼は 何に復讐しようとしたのだろうか? 三代に渡る 因縁と、長く生きたヒースクリフが 最後に見たものは 何だったのか …19世紀の 雰囲気がなぜか懐かしい、作品だった。
2019/05/18
ehirano1
世界三大悲劇だか四大悲劇だか忘れましたが、その名に値するのではないかと思いました。読中は何度も打ちのめされ、嵐が丘の住人は殆ど呪われているんじゃないかと思われるくらいで、読むのを止めようかと思ったこと数限りなし。しかし、物語が私を引き戻します、ホントに引き戻されます。このスケールと迫力を体感することで精一杯でした。いやはや圧巻!
2023/07/02
抹茶モナカ
ネリーという老女中の語る2つの家族の物語。ヒースクリフという悪の半生。どこか、フォークナー的な部分があって、その点が気持ち良く読めた。ネリーという老女中の語りという構造を何処まで信頼して良いのか、後半になって「おや?」と感じる部分があった。翻訳の問題かな、と思ったら、そういう構造みたい。いろいろな要素があって、豊かな小説。
2015/01/05
優希
壮大な世界が広がっているようでした。恋愛小説ではありますが、復讐や愛憎の要素が強いように思えました。恋心を抱きながらも、絶望へと導かれるヒースクリフの孤独な想いが突き刺さります。実らなかった愛が復讐心へと変化していく悲劇を感じずにはいられませんでした。キャサリンを愛し続ける想いはあれど、悪魔のような非情な心を抱いてしまったのは絶望と嫉妬が呼び起こした気持ちに通じるものがあると思います。愛と憎しみは表裏一体であると気付かされます。愛するが故の不遇な運命に悲しみすら見えるようでした。
2016/05/28
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