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ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

ペスト (新潮文庫)

作家
カミュ
宮崎 嶺雄
出版社
新潮社
発売日
1969-10-30
ISBN
9784102114032
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ペスト (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

小説はアルジェリアのオランの町を襲ったペスト禍の事後報告といったスタイルをとるが、報告者の医師リウーのエクリチュールが、一番の読みどころか。ペストがしだいに蔓延しつつある中、医師会の、そして行政のとる施策は事なかれ主義に終始するが、それは常にそうしたものなのだろう。次に登場するのが教会である。司祭パヌルーがそれを代表するが、彼の熱さと無神論者リウーの冷静さは、小説底流の構造を形成する。不条理の中にあって、その不条理にひたすらに耐え、運命を感受していくリウーの孤独は読者の共感をも拒否するかのごとくである。

2015/10/19

starbro

私は天邪鬼なので、読む予定のなかった本が急に人気が出ても手に取ったりしないのですが、職場の読友さんから思わず借りたので読みました。大昔に読んだ『異邦人』に続いて、カミュ2作目です。不条理なパンデミック群像劇、私は以前NHKの100分de名著『ペスト』を観ていたので、スンナリ読めましたが、普段本を読まないのにブームで読もうとした人は、挫折している人も多いのではないでしょうか? ペストの設定[既知の感染症ペスト+少ない情報量]≒現在[未知の感染症新型コロナウィルス+多い情報量]かも知れません。

2020/06/23

最初は疫病により隔離された街で残された人の心理描写を描くスティーブンキング的な話かと思っていましたが、哲学者の手にかかるとペストをシンボルに描きながら戦争や人の心の中の善悪を読者に投げ掛けてくる凄い作品だなと思いました。登場人物のそれぞれの考え方も共感するところもあればしないところもあり、人間の各々の感じ方も多方面から見られて、読み終わった後に誰かと論議したくなる、でも上手く言えないけれど、良作でした。ペストは決してなくならない〜の下りは、戦争と結びつけてしまい凄く恐くなりました。

2018/07/01

パトラッシュ

出勤時は地下街を通って地下鉄に乗り換えるが、先日そこを歩いているのが自分だけという朝があった。日常を奪われるとはこういうことか。私たちは今ようやくカミュが描いた「非道と暴虐のペストに支配された」世界を理解しつつある。ここには連帯して疫病防止に尽くす人びとは登場するが、本来それを先導すべき政治は市を閉鎖するだけの存在だ。コロナ禍にある現代人にとって作中のペストは戦争やファシズムのような暴力的支配ではなく、無数の監視カメラに支えられた恐怖政治に思える。中国や北朝鮮のように人はその恐怖も慣れてしまうのだろうか。

2020/04/16

zero1

カミュは神を信じてなかった? 舞台は北アフリカのアルジェリア。多くのネズミが死ぬ。それがペストだと分かった時にはすでに多数の患者が。市は閉鎖されたが、医師リウーはこの病に立ち向かう。神父はこの病気は神の罰だと言う。後半の山場は判事の子がペストで苦しむ場面。リウー必死の看病も子は亡くなる。憔悴した彼は、死んだ子に何の罪があったかと神父に詰め寄る。「異邦人」でもそうだが、カミュの反キリスト教が作品に色濃く出ている。私はここを評価したい。また、作中にもあるが、リウーをヒーローとして描かないのも評価したい。

2018/10/26

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