一年ののち (新潮文庫 サ 2-3)
一年ののち (新潮文庫 サ 2-3) / 感想・レビュー
優希
淡々としているけれど美しさがあります。サロンに集まる男女の1年に渡る物語。それぞれの恋のベクトルが違う方向に向いているのが切なくてたまりませんでした。繊細で濃密な世界観が漂うのに、サラリとした読み味はサガンならでは。人生に対する諦めのような倦怠感があるけれど、そこが心地よく感じられました。しっとりとした雰囲気が素敵です。キラキラした恋ではないけれど、味のある大人の恋という感じが好みでした。
2016/04/02
Y2K☮
パリの夜に渦巻くアンニュイと諦観は大人の享楽が導く愚かな旅路。孤独を恐れ、若い医大生の肉体に溺れるジョゼ。彼女に惹かれ、でも似過ぎているが故に愛されていないと悟る作家ベルナール。その彼に相応しい人間でありたいのにと苦悩する妻ニコル。舞台女優ベアトリスに逆上せるアランは中年過ぎて突然キャバクラに嵌る堅物の構図で、エドワールは年上好きの世間知らずというありがちな美青年。人生の答えから逆算した様な一文の数々が稲光さながらに煌めく。ボトルシップみたいに狭く、でも粘り強い者にしか創り出せぬ繊細で濃密なアートの妙味。
2016/04/02
ちえ
訳者後書き〈この小説を読む方々はスリルとか小説的な筋の面白さを期待してはいけない。これは私たちがただ一人で部屋にいるとき、何かしっとりしたものに触れたいときに読む本である〉複数の登場人物の恋愛。想いが通じない叶わない苦しさ、叶ってからふとあらわれる虚しさ、漂う虚無感。サガンならではのはかなさと美しさにため息。〈われわれはまたもや孤独になる。それでも同じことなのだ。そこに、また流れ去った一年の月日があるだけなのだ〉〈そんなふうに考えはじめてはいけない。そんなことをしたら気違いになってしまう 〉
2019/02/09
SOHSA
《購入本》プルースト或いは田辺聖子原作の映画『ジョゼと虎と魚たち』からのつながりで。けだるく哀しく諦念ただよう描写はやはりサガネスクというべきか。穏やかな中にも物語は展開し、時間はある確かさをもって過ぎていく。私が読んだのは昭和35年発行、昭和43年11刷版であったが、古い活字と日に焼けたページが妙に作品の雰囲気に相乗して、一層強い印象を受けた。既に絶版とは残念ではあるが次は何とか続編『すばらしい雲』を読みたい。
2017/02/14
マカロニ マカロン
個人の感想です:B。『ジョゼと虎と魚たち』(田辺聖子)読書会関連本として読んだ。以前「さがん」(『左岸』/江國香織)を読んだことはあるが、Fサガンは初めて読んだ。1960~70年代頃にブームになった作家だが、朝吹登水子さんのちょっと硬質な翻訳調の文章に登場する「パリ」や「学生区」(カルチェラタン)、「情人」(アマン)、キャフェといったオサレ感が受けたのか? 今読むと、夫の不倫で思い悩む妻、年下の情人とかあまり魅力的な小説と感じない。山村クミ子はジョゼと同い年(25)、お金と情人に困らない生活に憧れたのか?
2024/07/19
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