ブラームスはお好き (新潮文庫)
ブラームスはお好き (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
17歳で鮮烈なデビューを果たしたサガンだが、本作は彼女の第4作目にあたる。サガン25歳の時に書かれた小説。瑞々しさはもはやどこにもないが、その代わりに練達の度合いは増している。主人公のポール(女性)は39歳。2人の恋人ロジェ(42、3歳)とシモン(25歳)の間で微妙に揺れ動くポールの心理が小説の核を形成するのだが、サガンの想像力の冴えには感心する。タイトルの魅力とともに、粋なフランス小説であることは間違いないし、時間の淘汰にも耐えられるのだが、それを超えた普遍性の獲得にまではいたらないようだ。
2015/03/23
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
聡明で美しい四十歳目前のポールには長く付き合う恋人のロジェがいる。しかしふたりの関係はもはや、ポールの悲しみと忍耐なくしては成り立たないものになっていた。そんな彼女を若い情熱で癒す美貌の青年シモン。 何が起きる訳でもないし、登場人物は基本恋愛のことしか考えてないのに、美しく繊細な文章で心の動き、パリの香りを表現し、素敵な文学作品にしているところは流石。 若い男性と恋に落ちることは勇気のいることなのだろう。長く続いたもはや悲しみや落胆を感じる方が多い関係を断ち切ることも。 読んでいる時間が楽しい読書でした。
2019/06/23
ykmmr (^_^)
歳の離れた姉さん的、知性はあるが奔放な女性と、情熱的な年下好青年の恋愛話。フランスの旋律ある雰囲気にクラシック音楽(ブラームス・ワーグナーはドイツ…)が当てはまり、物語の『展開効果』を高め、歳離れた二人の不器用な恋愛が、ブラームス・ワーグナーの対称的作曲家で表現。若者の「甘酸っぱさ」を離れた、大人の「何処となく…愛するが故の孤独」を読める作品である。本人は自由奔放・波瀾万丈。しかし、その仕事ぶりは緻密で文学的。サガンらしい作品なんじゃないか。
2022/06/29
優希
この雰囲気が好きです。中年女性が女性として生きようとする悲哀が繊細な文章から伝わってきました。今まで通りの生活なら安定して楽な生活ができるのに、それを捨ててまで求めようとする何か。「寂しい幸福感」という言葉が頭から離れませんでした。いくら幸せな暮らしでも、ポールは孤独な心を抱えていたのが感じられます。気怠い虚無感が物語を味わい深くしていると思います。物語もそうですが、文章も素晴らしく美しい。グッと心をつかまれました。
2015/12/03
mii22.
再読。先日『悲しみよこんにちは』の映画を観た。原作では感じなかったが大人で自立した女性アンヌが男の裏切りにみせる絶望に多少の違和感を覚えた。そのせいで『ブラームスはお好き』の主人公、聡明で美しい39歳のポールをはじめはアンヌと重ねて読んでいたが、ポールはアンヌよりも成熟した女性に思えた。それは著者自身の成熟度を表すものだろうけれど、まだ20代前半でこのような作品を書いたことに驚く。刻々と変化するポールの心情をこまやかに表現し都会の中にあって孤独感から生じる男女の複雑な感情のもつれが丁寧に描かれている。
2020/05/18
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