劇場
劇場 / 感想・レビュー
kaoru
1930年代のロンドン。生まれながらの才能を持つ46歳の大女優ジュリアは富にも名声にも理解ある配偶者にも恵まれているが、23歳の青年トムと恋に落ちてしまう。上昇志向の強いスノブのトムとの恋がジュリアを苦しめるが、彼女を救ったのは「劇場」だった。「あなた達の人生は見せかけだけ」という一人息子ロジャーの言葉に「人間たちは私達の素材で、私達は彼らの人生の意味なのよ」と答えるジュリア。「彼らは演技はみせかけでしかない、と言っているけれど、そのみせかけこそ唯一の真実だ」という境地に達した彼女は芸術家の一つの典型→
2022/06/24
viola
この世界はすべてこれ一つの舞台、人間は男女を問わずすべて役者にすぎぬ。46歳の大女優ジュリアとトムの恋。だがトムは若手女優に夢中になっていく。『シェリ』や歌劇 ばらの騎士を連想させつつも、更に素晴らしいものに仕上がったモームの傑作。四六時中演じてしまう、ジュリア。本当のジュリアとは?演じる、とは何なのか?演じつつも、内面では全く違うことを考えていることを()を上手く使って信頼できない語り手的な効果を出しています。電気ストーヴ。確かに、あの場面では火がついてないければ、燃え上がっていなければなりませんがね。
2012/11/05
kinka
女優が主人公の話で、作者はサマセット・モーム。この人は多分芸術至上主義者なんだと思う。現実の感情とか喪失とかは、単なる影に過ぎない。真の形だとか、世界は芸術の中、この場合舞台の虚構上にあるのだ。現実が無ければ虚構も生じないじゃないかって? いやそんなことない。大女優じゃなくても、我々だって役を演じたり、仮面を被ったり、嘘を吐く。そんな演技を日常に埋もれさせてしまうのが一般人で、舞台の上で一般人相手に何らかの反応を起こさせることが出来るのが俳優であり、芸術家なのだ。…うーむ鼻持ちならん、けど面白かった。
2016/08/21
きりぱい
演じきった女優ジュリア。でも読者にとってはプライドも恥もむき出しの女が見える。ジュリアに添いすぎて、こうまで女心を暴かれてゆくことに、それが時には息子にまで明るみにされてゆくことに、胸が痛くて痛くて、面白くて面白くて、全く鮮やかな終わり方で、モーム作品のなかでもたまらない1冊となりました。
2010/03/01
る
「ビフテキと較べたら、愛情なんてなんであろう?」最後に愛欲を克服し食欲を満たすオバちゃん女優のお話。爽快!!
2016/12/25
感想・レビューをもっと見る