かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1)
かもめのジョナサン (新潮文庫 ハ 9-1) / 感想・レビュー
徒花
なんじゃこりゃ。ファンタジーのようでもあり、宗教の本のようでもあり、自己啓発本のようでもある。ひたすら飛ぶことが好きで技術を磨き続けるジョナサンというかもめがトコトン飛ぶことを追及していった先ある世界……は、もしかすると仏教でいうところの悟りに近いものなのかもしれない。そして、第2部、第3部へと進むにつれて、やがて彼の愛弟子となるフレッチャーへと引き継がれていく。短くはあるが、非常に不思議で印象深い物語だった。
2016/12/07
masa@レビューお休み中
後付けを見て驚いた。なんと、僕が生まれた年に刊行された本だったんですね。これは、一羽のかもめの物語です。名前は、ジョナサン・リヴィングストンと言います。ジョナサンは、どこにでもいる普通のかもめでしたが、三度の飯よりも好きなことがあります。それは、飛ぶことです。かもめだから飛ぶことが好きなんて当たり前と思うかもしれませんが、そうではないのです。物語の魅力、いやジョナサンの魅力に吸引されながら、あっという間に読了してしまいます。読みつづけられている理由が読んでみて、はじめてわかったような気がしました。
2014/10/19
匠
読み手によって様々な受け取り方ができる作品だなと思って読んでいたら、あとがきによるとレイ・ブラッドベリーも「読む者がそれぞれに神秘的原理を読み取ることのできる偉大なロールシャッハテスト」と語ったそうだ。異端と正統、マイノリティとマジョリティ、規制や束縛からの自由、親離れや独立、夢や希望の実現と厳しさ、読了する間にそんなキーワードが浮かんだ。書かれた時代背景も大いに関係してると思うけれど、メスのかもめが一切登場しないので男社会の寓話ともとれる。孤高のジョナサンに次々仲間が増えていくシーンが一番感動的だった。
2014/03/10
おしゃべりメガネ
前からよく見る装丁で、とある書評では『生き方の美学・スタイル』とあり、別の書評では『動きたくて眠れなくなる』とありました。話の内容、展開としてはとにかくシンプルにかもめの「ジョナサン」が空を飛ぶ話です。最初から最後までひたすら翔ぶ描写が延々と綴られてます。愚直なまでに自分のスタイルを信じて疑わず、人に左右されるコトなく、我が道を貫きとおす「ジョナサン」の美学にはうっとりすらします。信念を持ち続け信じてやりとおしていれば、必ず周りはついてくる。そんなコトをしっかりと学ばせてくれた奥深い一冊となりました。
2020/09/25
めろんラブ
本日、こちらの完成版が出版されたとのこと。初版から40年、封印していた最終章が加わったらしい。ならば、本作は未完成版なのか。確かに、作品に込められたメッセージを額面どおり受け取ると、ジョナサンという高みを目指す一羽のカモメの飽くなき挑戦と到達点は、あまりに直裁というか単純というか。深読みできる余地も残されており、解釈が難しい。しかし、出版当時の米国社会に蔓延する閉塞感を考え合わせると、こういう物語を作者も読者も望んだとも思える。時代と共に求められる物語も変わる。当時の完成版として、その価値は色褪せない。
2014/06/27
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