宇宙ヴァンパイアー (新潮文庫)
宇宙ヴァンパイアー (新潮文庫) / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
枚方オフ会での戦利品。「宇宙ヴァンパイアー」と言ったら私にとっては血液桿状体寄生生物、クルースニク(『トリニティ・ブラッド』)なのだがこちらの方は妖艶な人に擬態してセックスやキスなどで人の生気を吸収します。彼らに意識はなく、生気を吸った持ち主の意識バイタルをコピーできるだけでなく、人の意識そのものを追い出して身体を乗っ取ることができます。そんな設定に思わず、「アセロラ・キスショット・オリオン・ハートブレイドか!換生か!『ハーモニー』と『PSYCHO-PASS』か!」とツッコんでしまう^^;まさに盛り沢山。
2016/07/05
HANA
映画版は中学生の頃何度か見て、宇宙人とヴァンパイアという素材を上手くB級に調理していて好きだったんだけど、原作を読むのは今回が初めて。原作は倫敦崩壊とか色々ダイナミックだったのだが、こちらは毛色が変わって一種の思弁小説を思わせる出来であった。核になっている思想がエロティシズムや精神世界的なもので、いかにも七十年代八十年代を思わせるのですが。現在はこういう思想を小説に敷衍した作品ってまず出てこないので、そういう意味でも懐かしかったかな。ともあれ芯になっている部分が、いかにも著者らしい作品ではありました。
2016/07/07
kinnov
非Aのヴォークトや初期のディックを読んでいるかのような感触。ガジェットやSF的設定や展開は両者の方が強いけれど、肌触りがなんとも似ている。語りたい何かがあるようでなくて、ないようであって、理論的なようでいてどこか大雑把な所などだろうか。思想的、哲学的な何かを深く共有や共鳴するわけではないけれど、エンターテイメントとして最後まで飽きさせない、B級の勢いが面白い。精神のヴァンパイアーが暗喩する人間の有り様を考えようとしても、美女との絡みがエロすぎてどうでも良くなるのが素敵。
2018/07/30
ヘラジカ
なんとも怪しげで胡散臭いB級SF小説といった印象。オカルトという言葉が日本で広まるきっかけとなった作家と知ってなんとなく納得した次第。面白かったのだが、良質な低予算映画をDVDで鑑賞したような感じは拭えない。この「何にも残らないのが残った」のが良いのかなーなんて適当なことを考えていたら、巻末の対談で村上春樹も同じようなことを言っていて驚いた。こういう本が入る辺りに村上柴田翻訳堂セレクションの面白さがあるのかもしれない。SF小説としては、ミステリータッチなので日本人にも馴染みやすいと思う。
2016/07/09
かえる
「村上柴田翻訳堂・復刊」。SFジャンル苦手で一度挫折し、間をおいて挑戦。あれ?なかなかいいじゃない。生命を吸い取るヴァンパイアーというエンタメSFの中に、生命の起源、犯罪学、心理学などの思想がぎゅうぎゅう入っている。作者はSFをモチーフにし、人間の精神や本能を伝えたかったのではないか。村上さんがこの小説が好きだというのが意外だけど、ほんとにたまにはいいですね。つまらなくもないし、嫌いでもない。映画観るなら、この原作を読んだ方が抜群に面白いだろうなぁと思う。私はまた読み返します。
2017/01/16
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