グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)
グラーグ57〈上〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
『チャイルド44』の続編。フルシチョフ時代になって、スターリンのとった政策が根底的に否定される。本書は、先の正編とは対象的な形で、レオたちの行動に対する反動が描かれる。それが過酷なものであることにおいては正編に遜色はないが、残念ながらやはりあの戦慄は及ばない。また、正編が公的な性格を持っていたのに対して、こちらは私的な要素も大きく、その意味でも対象的である。レオの抱える苦悩もまた「私」の領域に属しており、それはよく言えば深化であり、物語が一層の重層性を得たということになるだろう。
2021/05/21
遥かなる想い
2010年このミス海外第6位。 『チャイルド44』の続編とも 言える本書はソ連という 巨大国家の闇に翻弄される人々を描く。 スターリンからフルシチョフへ…政局が大きく 変わる中で、かつて国家の 命令の下で行った 告発・密告・拷問・粛清への報復に怯える人々。 全編を覆うようなソ連社会の冷たい闇のようなものが 本当に怖い。 レオとライーサ夫妻に 忍び寄る魔手、そして養娘 ライーザを救うために、 囚人として収容所に忍び込むレオ…グラーグ57という 名の収容所で、何が 起こっていくのか…下巻の 展開に期待。
2015/01/17
KAZOO
この作者の三部作のうちの第1作と3作目は読んでしまいましたのでこれが残ってしまいました。というよりも時間的な視点からはこれが最後になるわけです。主人公の立場も変わっていき、さらにそれらを取り巻く環境すなわちスターリン時代が終わってフルシチョフの時代に入って置かれた立場がガラッと変わります。このようなことは他の国や日本でも終戦という状況で変わっていくところだとは思いますがそれをうまく題材にして主人公たちの行動などをうまく描いています。
2016/04/11
修一朗
スターリン時代が終結し,フルシチョフのスターリン批判から始まる第二段。今度は体制変更による政治犯釈放で報復の影におびえている元秘密警察と権力側という背景で,当時のソ連の混乱ぶりが虚実取り混ぜてみっちりと描かれる。殺人課となって贖罪に励むレオ,下水管での追走劇,囚人護送船での嵐,強制収容所の拷問と次々と襲いかかる危機を凌いでいく展開は前作同様。痛くてハラハラのサスペンスだ。下巻へ。
2016/01/23
伊田林 浮刄
★★★★☆前作で人間性を取り戻し真人間になることを決めたレオ。でもコロッと変わる体制はそんな彼の改心を許しちゃくれない。本作のレオはまるでソ連版ジャック・バウワーみたい。さあどうなるレオどうなる嫁どうなる養女どうなる相棒…って感じで下巻へ続く
2016/03/24
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