グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)
グラーグ57〈下〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
前作を半ばは踏襲しつつも、いくつかの違いもまたある。その一つが、前作ではスターリンの独裁体制であったものが、フルシチョフ体制になって、共産党内での主導権争いが生じたことである。レオは、そうした政争に巻き込まれてゆくのだが、それと同時に本書を動かしてゆく大きな要素となるのが、フラエラの強靭なまでの負のエネルギーである。息もつかせぬサスペンスはここでも健在だが、フラエラの個的な怨恨が原点になっているところが、物語の面白さとしてはともかく、小説の持つ力としては幾分弱いか。また、今回のあるいはハッピーエンドか⇒
2021/05/23
遥かなる想い
下巻は収容所での拷問に耐える レオの苦闘から始まる。 「やむを得ず殺された」囚人たちの 怨念は強く、処刑は過酷を 極める。あの時代、個人の 意志などあったのか…生涯 を復讐に捧げたラーザリの 妻フラエラ。 壊れた心が保持する復讐への 執念。そして度重なる 裏切りが物語に異常な 緊迫感を与える。 舞台はソ連からハンガリー動乱へ…あの冷戦時代の東欧諸国の混乱の裏を現代に 伝えてくれる…そんなミステリだった。
2015/01/17
KAZOO
このような状況をよくこの作者は書けたと思います。収容所からの家族を連れての脱出、しかも今までとは立場が逆の方向になっているような感じです。読んでいてやはりかなりの気力のいる作品であると思いました。最後はソヴィエトからハンガリーへということで向かいますが。このような状況に置かれた人待は戦時中もかなりいたことでしょうし、祖家と連邦が崩壊してもいたと思われます。そのような人々を主人公にしただけでも読む価値はあった気がします。
2016/04/13
修一朗
1956年のハンガリー動乱がみっちり描かれており迫力ある展開だ。史実がかなり占めているのだろう,暴徒化する群集と戦車部隊との攻防は抜群の臨場感だ。読んだ後に足部だけ残ったスターリン像の生々しい写真を見た。ゾーラがスターリン像の頭にまたがっている姿が想像できてしまう。情勢に乗じて冷静に復讐をやってのけるフラエラがまこと魅力的な敵役だった。レオとライーサの家族再生の物語として読むと物足りないのものがあったが,続編でエレナが立派に成長して活躍っ!ていう展開だといいな。
2016/01/25
財布にジャック
予想としてはアメリカ人気ドラマのプリズン・ブレイクのような脱走物になるのかと思っていたら、かなり違いました。善と悪との対決が描かれるわけですが、登場人物ひとりひとりに辛い過去や事情があり、読み終わる頃には、仕方がなかったのかと頭を抱えてしまいました。完全なる悪が存在しないのに、人が殺されたり不幸になっていく考えさせられる物語です。後書きにまだ続編があると書いてあったので、是非ハッピーエンドになることを祈りたいです。
2010/10/28
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