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暴行 (新潮文庫 ヤ 3-1)

暴行 (新潮文庫 ヤ 3-1)

暴行 (新潮文庫 ヤ 3-1)

作家
ライアン・デイヴィッド ヤーン
Ryan David Jahn
田口俊樹
出版社
新潮社
発売日
2012-04-27
ISBN
9784102180419
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暴行 (新潮文庫 ヤ 3-1) / 感想・レビュー

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niaruni

ミステリというよりも文芸作品みたい。暴行事件を傍観していた者たちを描いているのに、“傍観”の部分の描写はあまりない。そのことで“傍観”していた罪の意識の希薄さが際立つような気もするし、逆に作品の核であろうと思われる部分がぼやけてしまっているような気もする。それぞれが抱えていた傍観せざるを得なかった切実な事情が今ひとつ見えにくく、“傍観”していたというほど積極的な関わりすら持たず、ただ単に事件と擦れちがっただけ、というような印象を受ける。群像劇としても、求心力が弱いかも。嫌いな作品ではないけれど…うーむ。

2012/08/18

りつこ

うわーん。嫌な話だよー。傍観者効果…。確かにそれはとてもよくわかる。目撃者たちもそれぞれの生活があり、それぞれのっぴきならない事情があって、これだけの人が目撃しているのだから…となるのもわからなくはない。それにしても…うーん。フランクとデイヴィッドだけが唯一の救いだったけど。こういうものを好んで読む気はしない。

2012/07/31

桜子

これは凄い。個々の人間ドラマを成立させつつ、暴行の一部始終を余すところなく描写。現実をストレートに炙りだす筆力は相当なもの。構成も申し分なし。変愛アンソロジーに紛れていてもおかしくないエピソードもあり、ポイントが二倍ほど跳ね上がった。押しつけがましい問題提起では人の心は動かせない。その点をよく心得て書かれていると思う。

2012/05/28

すけきよ

目撃者たちは、彼らは彼らで、のっぴきならない状況にあった。彼らも人生の岐路に直面していた。客観的に見れば、一人の女性に生死がかかってるのに!と批判は簡単だけど、その瞬間においては自分たちの問題の方に重きをおくのは当然なんだよね。人生は一瞬一瞬の選択と偶然の上に積み上がっている。キャラクターにどれくらい実在の人物をモデルにしているかはわからないけど、当時のアメリカで顕在化し始めた問題ばかり。彼らが悲惨な事件を見て見ぬふりをした一方で、彼らの選択が少しでも人生を幸福にできればと願わずにはいられない。

2012/06/27

tom

もし路上で倒れ、周りに人が寄ってきたら、その中の特定の誰かを見つめて、救急車をお願いと頼むのがよい。そうでないと、集まってきた人たちは傍観者でありつづける可能性があるという心理学の実験があった。この話は、そんな実験の背景にあった実際の出来事を下敷きにしている。でも、この本は、傍観者を断罪するために書かれたものではないようだ。傍観しているそのときにも、傍観者には傍観者なりの暗いドラマがあって、日常の生活というのは、暗いドラマの集積なんだということを書いているようにみえる。その意味で辛い話だった。

2012/07/01

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