クージョ (新潮文庫 赤 193-3C)
クージョ (新潮文庫 赤 193-3C) / 感想・レビュー
Tetchy
これは単なる狂犬に襲われた親子の物語ではない。キングにとっても実験的な作品だったのではないか。それまで能力者を主人公にしたり、吸血鬼や幽霊屋敷等、古典的な恐怖の対象を現代風にアレンジする、空想の産物を現実的な我々の生活環境に落とし込む創作作法が、今回は狂犬に襲われるという事件をエンストした車内という極限的に限定された場所で恐怖と戦いながら生き延びようとする、どこかで起こってもおかしくないことを恐怖の物語として描いているところに大きな特徴、いや変化があると云える。それを彼がやってのけたことが凄いのだ。
2018/01/02
アナーキー靴下
表紙絵や裏表紙のあらすじから、狂犬病にかかったクージョが人間に牙を剥くパニックホラーものと思い読むが、なかなかクージョが出てこない。しかし中盤以降の追い詰められかたは息を呑むほどで、読み終えてみれば凄い作品だった。事後になれば容易く因果を遡れる皮肉な悲劇。一つ一つの選択が誤っていたとして、何が彼らを誤らせたかといえば、愛ゆえに過ちを犯し、被害を広げたのだ。「自分一人だけなら」…デッド・エンドまで緻密に張り巡らされた伏線を辿り行き着くのは、愛さなければ失わなかったという真理。それでも愛さずにはいられない。
2021/10/16
hit4papa
狂犬病のセントバーナードが、車に立てこもった幼子とその母親をひたすら襲いまくるというお話し。短編ですら間が持たないシチュエーションを、読み手を飽きさせるどころか、息をもつかせぬパニック長編に仕立てあげるのが巨匠キングです。車外にはぶちキレたモンスター犬、車中は灼熱の太陽でオーブン状態。脱水症状が始まった息子に錯乱する母親。ねちっこいキング節に酩酊すること必至。絶対絶命の二人は果たして...本作品は映画化されていますがラストは全く異なります。母の贖罪が物語の裏側にあるのであれば、原作の方が正解なのでしょう。
2017/01/24
みも
陰惨なれど圧巻は最終盤50頁。但し、そこに至るまでは無駄に長い。要約すれば狂犬病に罹った大型セントバーナード犬(名前がクージョ)の凶暴性を描いただけの作品。登場人物も極少で構成もシンプルであるにもかかわらず、微に入り細を穿った状況説明と心理描写によって強引に推進し、ホラー小説というより長大でリアルな生々しい人間模様に仕上げてしまった。典型的なアメリカ的ジョークを散りばめた、流行作家の筆によるペーパーバックといった趣きで、犬を擬人化する等の工夫も見られるものの、短篇向きの主題を無理に引き延ばした感は否めず。
2018/08/31
散文の詞
クージョという名前のセントバーナードが、コウモリにひっかかれて狂犬病をうつされて、人を襲うって話です。 いつも通りにこれでもかっていうくらい書き込まれています。 ホントは怖い話なんだろうけど、泣きました。 多分、それほど犬好きでもなんですけど、犬のクージョを怪物として描いていないからですかね。 なんか、かわいそうで。 多少、グロい表現もありますが、なんとか読めると思います。
2019/11/20
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