スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)
スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫) / 感想・レビュー
Tetchy
春と夏、秋と冬。それぞれ2つの季節に分冊された2冊の中編集はそれぞれの物語が陰と陽と対を成す。中間期は優しさの訪れであるならば極端に暑さ寒さに振り切れる季節は人を狂わす怖さを持つ。それがキングの心象風景なのだろうか。各編に共通するのは全てが昔語り、つまり回想で成り立っていることだ。キングは本書で斯くも自由奔放に物語を羽ばたかせた。春夏秋冬、キングの歳時記とも呼べる本書は『ゴールデンボーイ』と併せてかけがえない作品となった。永遠のベストの1冊をこの歳になって見つけられたキングとの出逢いを素直に寿ぎたい。
2018/03/29
ALATA
線路を歩き続け、列車に追いかけられ、「死体探し」の旅に出る。誰も忘れることのない12歳の秋、9月の二日間。こういうことはフラッシュバックのように思い出すことがある。ささいな出来事が、時間を経るうちに大きく変容していくものだ。バーン、クリス、テディ、ゴーディの恐怖と苦悩から絡み合う特異な友情が切ない★4※「おれたちはやったよな?」「その価値はあった、だろ?」暗い川面から抜け出そうとする少年たちが愛おしい。いい読み物でした。
2024/05/06
あきぽん
名作映画の原作。この作品は、夏の終わりのむせかえるような濃厚さと、胸を締め付けられるような寂寥感に満ちていて、読後ずっしりと残ります。子供時代が終わるころはこんな気配がしていたのだ…。
2019/08/18
のっち♬
表題作はジュブナイル的な甘酸っぱさや爽快感とは無縁の話。一夏のイベントが運命の分岐点になる残酷な成長の痛みがノスタルジックな感興を呼び起こす。『奇譚クラブ』はゴシック風味で背景も戯れ心満載。双方に二都物語ネタを使うディケンズ愛。酔狂な筋を精一杯の背伸びや気遣いで膨らませる描写、パイ食い大会や機関車呼吸といったナンセンスジョークなど、本編・作中作に若々しい反骨や諧謔が犇めいている。著者はホラーの外側で言葉と愛の溝にフォーカスすることで語るべきこと、語らざるべきことに向き合い、語り手としての在り方を再考した。
2023/01/01
藤月はな(灯れ松明の火)
映画を思い出しながら読みました。映画とは細部で違う所もありましたが、映画は原作に忠実に作られていたんだと知りました。個人的に「人生」を表していて好きだった太っちょくんの復讐劇の話もちゃんとあって嬉しかったです。ゴーディ達の親は子供を舐めすぎだし、同時に子供に甘え過ぎである。でもクリスの事を信じ続けたバーティ先生やリンチされるゴーディを助けたエビーおばさんのような大人達もいたのだ。そして生きている者と亡くなった者達、過去と現在との間に横たわる時の流れに読者も重ねて佇むしかない。キングと編集者の裏話には笑う。
2017/02/12
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