オンブレ (新潮文庫)
オンブレ (新潮文庫) / 感想・レビュー
starbro
私は、ハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上春樹翻訳小説は新刊中心に読んでいます。西部劇であまり変化がないせいか、村上春樹が言う程の面白みを感じられませんでした。映画の方が良いと思われます。アメリカ人が日本の人情物の時代小説を読むような感じなのかも知れません。
2018/03/07
ケイ
『オンブレ』結末に向かうのが怖く、諦めるようにページをめくった。本を開いた時から充ちているノスタルジー。全体に漲る緊張感。書き上げた男に対する無意識の共感を信頼としながら、経験を唯一共有しているはずのマクラレン嬢との会話を通し、彼はタバコをふかしながら結論を出す。『脂肪の塊』を書いたモーパッサンが読めば、こういう風に書くんだねっていうんじゃないかな。『3時10分 ユマ行き』30頁で仕上げられる西部の男の正義に嘆息。煙る銃口にそっと息を吹きかけたくなる。 どちらの作品にも村上春樹の影がなく、それが素晴らしい
2018/06/03
Tetchy
10年ぶりのレナード未訳作品刊行、しかも訳者は村上春樹氏!まさに夢のようだが兎にも角にもそれは実現した。本書収録のレナード最初期の作品2編はブレイク後のレナード作品の悪役ほどの個性はないが、その萌芽は確実にみられる。この2編を読んで思わず出たのは「男だねぇ」の一言。村上氏がレナード作品を訳出した理由はただ単純に読み物として面白く、小説として質が高く、全く古びないからだと。それは本書を読む限り、本当のことだ。今後もコンスタントに氏の訳で出版されることを望む。私はそれにずっと付いていくとここに宣言しておこう。
2018/10/27
海猫
久々のレナード翻訳新刊で訳者が村上春樹、しかも西部劇と嬉しい本なのでいそいそと読む。表題作は駅馬車が悪党に襲われて始まる闘い、といういかにもアクションウエスタン風な話だが読み終えると印象が違う。人物の心理や絡みようが複雑でそこに魅力を感じる。第三者の視点から寡黙な主人公像が語られる構成も良い。アパッチの作中での扱いなど興味深い。物事は一面的ではないし人は思いがけない行動を取るものだ、といった感慨が残る。「三時十分発ユマ行き」の方は短いが、キレと緊張感あってカッコイイ!西部劇的痛快さは表題作よりこちら。
2018/02/14
藤月はな(灯れ松明の火)
読友さんの感想で「西部小説」という今では、珍しい言葉が出ていて惹かれました。大好きな西部劇である『決断の3時10分』の原作もあるのも嬉しい^^表題作の設定や乗客の一人が一方的に蔑まれているというのは、映画『駅馬車』を彷彿とさせます。何も行動しない男共、ミセス・フェイヴァーの偽善やマクラレン嬢の夢見がち理想主義を知ると、アパッチに育てられた「オンブレ」ラッセルの一見、冷酷に聞こえる現実的な言葉と「やるべきことはやる」主義がより一層、際立たせます。そして彼の真価に一目置いたのがメキシコ人であるメンデスなのも粋
2018/03/27
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