第四の手〈下〉 (新潮文庫)
第四の手〈下〉 (新潮文庫) / 感想・レビュー
NAO
アーヴィングの作品には世界の末期的な症状を描くために暴力的な描写が多く用いられるが、『第四の手』では暴力的なシーンはあまりない。もちろん、パトリックがライオンに手を噛み千切られるシーンはいかにも暴力的だが、それは生々しい事件というよりも象徴的なモチーフという印象を受ける。暴力的なのは、むしろ「その本質的な事柄に注目することなく、その災害を自分たちが見たいような角度からのみ見て、解釈して報道」しようとする「災害チャンネル」の方かもしれない。
2021/03/02
びす男
あはは。女性関係に無節操なTVリポーターが、ライオンに手を食われて始まるラブロマンス。そもそも、このあらすじからして滅茶苦茶じゃないか。面白かった■地の文で、キャラクターを皮肉り、イジリ倒しているのが新鮮。自分で登場人物を作っておきながら、ここまでこき下ろすのは理不尽ではないかと思うほどだ■だが、主人公のパトリックが自分の目指すべき愛に気づくにつれて、笑わせにくる度合いは薄れていく(気がする)。「真実の愛」なんて照れくさい。だからユーモアに紛らせて、最後にそっと語る――。そんな、好感の持てる小説だった。
2019/08/17
田中
女性にモテるし下半身に節操がないパトリックは、腕を失ったことが縁となり、愛する女性をみつけた。幸せな家庭の道筋を真剣に考える。その解答は、グリーンベイ・パッカーズの観戦。ファンの熱さには、なかなかすごいものがあった。クラウセン夫人の親族と邂逅するランボー・フィールドのスタンドのシーンは、胸が熱くなる。一族が傾ける親密な情愛が渦巻くのだ。アーヴィングの子供や家族にむける愛情のまなざしは心が泣けてくる情景だろう。マンデーナイト・フットボールを楽しみにして特別に応援するファンの心意気は分かるような気がした。
2022/10/19
ユーカ
上巻のラストに感じたような心が握られるような感じは下巻では最後まで訪れなかったが、序盤から非常にスムースで、あっという間に最後まで読めてしまう。楽しかった。ニューヨークのモテ男パトリック(しかも三流とはいえ、ニュース番組のアンカー!)が左手首から先を失い、失った手が元でとてつもない恋に落ち、家族を得るまでの足掛け10年くらい?の物語。ニューヨーク的なアメリカ感バリバリのお洒落且つ面白い、軽妙な小説を求めている人にはドンピシャ。
2020/05/12
北風
第四の手って、そういうことかあ。想像していたのとは違うけれど、いい印象でした。相変わらず下半身が緩いパトリックですが、まあ女たちが放っておかないというのは、ある意味気の毒。ほんと、男ってバカで罠にハマリやすいな。しかし、展開としては罠に落ちることもなく、落ち着くべきところに向かっていく。その過程は、なんというかパトリックの努力と言うよりも、運がいいだけな気もしますけれど、落ち着いて読んでいられたかな。お幸せに。
2016/04/29
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