マイクロチップの魔術師 (新潮文庫 ウ 9-1)
マイクロチップの魔術師 (新潮文庫 ウ 9-1) / 感想・レビュー
ニミッツクラス
89年の320円の初版。真鍋タッチのカバーは奥村氏で、オビのキャッチの“想像力と数百円”は上出来。新潮は同じ年にディックの「模造記憶」やセーガンの「コンタクト」を出している。著者ヴィンジの短編に興味があるけど、邦訳分はほぼ無い。本書は米本国81年の中編(ノベルでは無くノベラ)で、ウォルターズの点描挿画18点を入れても160頁程しかない。他方、巻末の解説としてMITのミンスキー所長が何と26頁を費やして熱く厚く語っており、当時の状況が判り易い。電脳ギブスンは84年からだから、本書は先駆的な秀作。★★★★☆☆
2019/05/23
スターライト
サイバーパンクの先駆的作品と評されるけれど、本家には申し訳ないがこちらのヴィンジ作品の方が面白い。自分の犯罪を見逃してくれる代わりに福祉省の依頼を受けた主人公ポラック。別名〈スリッパリー氏〉は、美貌のエリスリナとともに「郵便屋」打倒に立ちあがる。ネットワーク世界の描写も何やらユーモラス漂って楽しく、何よりヴィンジの語り口のうまさにやられた。
2013/05/19
みどるん
80年代にネトゲ廃人を示唆しててびっくり。解説がマービン・ミンスキーで内容も気迫が溢れてる。
2014/09/12
roughfractus02
脳と接続した電脳空間での戦いの物語を描く本書は『攻殻機動隊』に多くのヒントを与えた。が、電脳空間を制御し名を特定する側(公安)から描く『攻殻』に対し、匿名の側から描く本書はインターネットに自由を見出す後のサイファーパンクを惹きつけた点にその特徴がある。真の名(原題はTrue Names)を暴こうとするFBIに抗するハッカーたちが暗躍する自由の「魔窟」を創造した計算機科学者の作者は、大学の匿名トークの体験からこの空間を発想した。長大なM・ミンスキーの解説と共に人間を越えた自由ついて考えさせる(1981刊)。
2018/05/04
DWAT
原題はtrue names。 魔法における真名の力・支配というアナロジーが、その後のリアルなネット社会における実名晒しのインパクトおよびそれ以上の脅威に該当することを予見していて、初読の時は驚いたものだった。
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