ブライト・ライツ、ビッグ・シティ (新潮文庫 マ 8-1)
ブライト・ライツ、ビッグ・シティ (新潮文庫 マ 8-1) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルの『ブライツ・ライト、ビッグ・シティ』は、もちろんニューヨークのこと。東京がそうであるように、一つの街であって、いくつもの街を内包するニューヨーク。作家は、読者に「きみ」と2人称で語りかける。そうだ。私たちは読者であると同時に夜の街を彷徨う主人公でもあるのだ。それは、映画を見ているような体験なのではなく、映画という虚構に出演しているかのような感覚だ。それは、あくまでも虚像なのだが、虚像こそがニューヨークには似つかわしいではないか。'80年代のニューヨークを語る(最でこそないが)先端の小説がこれだ。
2015/09/14
遥かなる想い
80年代ニューヨークの若者の日々が満載の 物語である。 大都会の街で、 ドラッグとアルコールと パーティーに 明け暮れる「きみ」を 軽やかに描く。 二人称現在形で描かれるニューヨークの夜は 終わることなく、若者たちも眠らない。 アメリカの良き時代..だが、 満たされない想いは すべて投げやりで ただ 流されていく..ひどくお洒落な ニューヨークの夜の物語だった。
2017/07/11
ケイ
80年代NY。ドラッグにパーティ、アルコール、キレイな女、浮かれた日々。しかし、彼は本来そんな所にいる輩ではない。傷ついているのだ。アマンダに去られて。母を失って。それに向き会えたときに彼の再生が始まる。NYの夜は光輝き明るいけれど、本来の彼が属するのは、朝の眩しい光と焼きたてのパンの匂いのするところ。そして踏みしめられる大地。友人のタッドの憎めなさがブラボー。そんな所に行くカッコつけた輩は、みんな無理しているのだ。そして、本当に転落する前に抜け出られた人は、もがいている者に優しくできるのだろう。
2016/01/31
まふ
大手出版社で地道な文学作品の「裏付け調査」を担当する主人公は自慢の売れっ子美人モデルである妻に逃げられ、コカインを吸引しナイトクラブで遊ぶ常連となり、仕事に失敗し会社をクビになり、と、人生が一気に流動化する。堅実な弟の出現により母の最期を想い出して目覚める・・・。青春物語として読むべき作品だろうが、多くの物語に纏わりついてくる「麻薬」がこの作品でもベースとなっており、麻薬なしの物語は米国小説家が書けない領域なのか(イージーに書いてしまっているのではなかろうか)と思えてならない。G1000。
2023/11/13
扉のこちら側
2017年183冊め。【299/G1000】思い入れがあるWTCが表紙に描かれているので期待したが、作品自体には関係なくて寂しい。しかし80年代のNYの香りはこれでもかというほど感じられ、満足。『きみは』と読者に語り掛けるような二人称がよい味を出している。こういう街と人を描く作品もやっぱり好きだ。『硝子の街にて』シリーズを再読したくなった。
2017/02/22
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