砕かれた夜 (新潮文庫 カ 18-2)
砕かれた夜 (新潮文庫 カ 18-2) / 感想・レビュー
harass
ベルリン三部作の二作目で二年後の1938年。主人公の探偵グンターは、ナチ高官ハイドリヒにより警察に復帰を命じられる。アーリア人少女の連続殺人の犯人を突き止めるだが…… 前回の「探偵もの」ではなく、「警察もの」小説に変わる。個人的に私人として権力もなにもない探偵が活躍するお話はあまりにナイーブでご都合主義がすぎていると感じていたが、警察小説だとスッキリと読める。当時の生活風俗を巧みに描く筆力に感心する。38年は重要な事件がいくつもあり、各章ごとの日付が主人公たち、ドイツ国民を翻弄する暗い歴史を実感させる。
2014/11/14
田中
ベルリン三部作の第2部。前作よりもさらに込み入った犯罪だったけどリズム良く展開されてとても面白かった。今作は一時的にグンターが(仮)警部となり真相を暴く。さらに、ユダヤ人の迫害という陰謀を防ごうとする。前作で突然消えてしまったインゲ・ローレンツも明らかにされた。読みどころが満載だった。重くなるテーマも含まれているし、虚しい失望感もある。ヒルデガルトとの恋愛の果ては、「大人の対応」だろう。グンターの魅力と個性が生き生きと躍動している。次作も楽しみだ。
2020/07/18
chiseiok
グンター二作目。ハードボイルド世界では、”洒落と皮肉の効いた憎まれ口”というのは、ほぼ主人公だけの特質であり、そのことによって組織内で下手を打ったり、敵役を激昂させたり、あるいは危ない美女にモテまくったりする…ていうのが自分の認識でした。が、本シリーズにおいては登場人物の誰も彼もが主人公グンター同様の捻りの効いたメタファーで会話を繋げている。その婉曲表現の多さやドイツ名前の脇キャラがイメージしづらいことで、事件捜査の展開や結末については自分の読解力ではどうにもモヤったままですが、それなりには楽しめたかな。
2017/05/06
春ドーナツ
前作の2年後、1938年の夏に物語は幕開けする。今回は章のはじめに日付が明記される。警察小説となった。題名が2作とも翻訳者のオリジナルで、「March Violets」は文章の中にも2、3回出てきた。検索するとバンド名がヒットした。なんか意味があるんだよな。「The Pale Criminal」は「青白い犯罪者」。そうか。「砕かれた夜」は物語が山場を迎える頃に、そういうことかと唸る。連続殺人事件の常として解決の糸口は遅々として出てこない。第一部に張られた伏線を絶えず念頭に置いて読む。第二部そうきたかとなる
2023/09/05
ネムル
ベルリン三部作、その二。1938年を舞台にこのタイトルとくれば、当然あの事件を想起する。ナチの陰謀に抗いながらも、抗い得ない歴史の闇、一作目以上に苦い結末だ。36年を舞台にした前作が孤高のハードボイルド・スタイルで描かれてるらのに対して、本作が警察組織に飲み込まれつつ、その内側からの奮闘を描くのが面白い。
2019/06/28
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