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ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)

ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)

ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫)

作家
ポール・オースター
Paul Auster
柴田元幸
出版社
新潮社
発売日
2006-12-22
ISBN
9784102451090
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ミスター・ヴァーティゴ (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

オースターは一筋縄ではいかない作家である。これまでに読んだ作品でも『最後の物たちの国で』、『ムーン・パレス』、『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』そして、この『ミスター・ヴァーティゴ』を並べると、文体も(原文を読んでいないので推測だが)構想も全く別人かと思うくらいに違っている。本書は、そうしたオースターの作品群の中にあって、最も寓話的な要素が多そうだ。ただし、それ(典型的なのはウォルトの空中浮遊)がこの作品の中核を成すかといえば、必ずしもそうではない。物語は晩年のウォルトの回想録のスタイルをとって⇒

2024/05/02

nobi

童話的世界、ショービジネスの世界、アウトローの世界そして回想。主人公は同じウォルトでも、少年、青年、成年、老年と変わって行くにしても、一つの小説の中で各章こんなにテイストが違うのが意外だった。“えーっ、そんな無体な”って死の現れ方も意外。“強制された死”“選び取る死”“強制する死”。そこに見るアメリカの狂気の一面と覚悟を決めた人間の凄さ。そんな読者が振り回されるような小説世界展開の中、最もフィットしたのは童話的世界。師と弟子の掛け合いが物語風。で空中浮揚できるかも、と思ってしまうほど、その感覚実感できる。

2018/12/15

はたっぴ

オースター2冊目。『ガラスの街』とは作風が異なるものを探して読了。孤児ウォルトの波乱万丈記をテンポよく楽しんだ。わずか9歳の札付きの少年が、死ぬほどの鍛練を重ねて、師匠から空中遊泳の技を習得する。あり得ない話だが、ここまで努力すれば体の一つや二つ浮かぶだろうと思いながら、師匠と弟子(少年)の珍道中を堪能。やがて2人の間に親子と見紛うほどの絆が生まれ、母親や兄代わりの仲間にも恵まれる。その後も幸せや不幸が衛星のように2人の周囲を巡り、ドタバタした感じが名残惜しくなるほどだった。ずっと読んでいたいと思う一冊。

2016/08/05

市太郎

一人の波乱万丈な人生に空中浮揚という寓話性を取り入れることでお伽噺的な楽しめる小説となっている。しかし彼の人生は時に過酷で痛々しく素直にそのまま子どもに読ませられない。ある程度の大人が読むなら問題ない。ましてやこれは子ども向けというより、この主人公が持っている純真な心を現社会や大人に向けて訴えているのではないか。今は廃れたかも知れないが、昔の子どもは空を飛ぶくらいの夢は誰でも信じていたものだ。こちらの意外性を突く展開は作家の力量を感じさせる。そして偶然。人生何が起きるかわからないから希望を持って生きよう。

2014/02/26

トラキチ

原題"MR.VERTIGO"、柴田元幸訳。文庫本の表紙から見るとファンタジー要素の詰まったほのぼのした作品であるように見受けられるけれど、そこはオースター、人生の厳しさをそこはかとなく教えてくれます。 但し他のオースター作品とは少し毛色が違った作品と言えばそれも当てはまりそうです。 かいつまんで言えば一人の少年(ウォルト)の波乱万丈な人生を振り返った作品であるのですが、人生は決して甘くなくアメリカ社会の厳しさと自由さが身に染みて来る内容はオースターのストーリーテラー振りが開花された作品であるともいえる。

2016/09/26

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