メリー・スチュアート 上巻 (新潮文庫 B 4-9)
メリー・スチュアート 上巻 (新潮文庫 B 4-9) / 感想・レビュー
ぱなま(さなぎ)
「恋の闇」はかくも残酷に人を変えてしまう。不均衡な愛人関係は王たる彼女の自由意志すら棄てさせ、精神上の被支配者に陥れる。報われぬ恋にのめりこんだ人間がずぶずぶになって自分の形をなくしてしまう姿というのは現代女性にも共感を呼ぶのではないだろうか。その関係のはじまる以前から際立っていた人物描写は、事件の夜に張り巡らされた伏線回収のように彼女の心理状態を読者にのみこませる。またメアリー・スチュアートとエリザベス、まるで対極的に思われる二人の女王が同時代に隣国を統治していた事実は、胸躍るほどに興味を惹く。
2019/03/09
kaoru
生後6日でスコットランド女王、17歳でフランス王妃となり、美貌にも才知にも恵まれたメリー・スチュアート。6歳でフランス王太子フランソワに嫁いだときには舅のアンリ2世から「いままで見たことのない完全無欠の子供」と呼ばれた。すべてを天から与えられたかに見えるこの女性が、どのようにして自らを破滅に導く道を歩むのか、上巻では残酷な運命の歯車が次第に音を立てて回り始める。「恋の闇」というが軽薄なダーンリーに恋をし、彼に幻滅すると支配的なボスウェルにすべてを投げ出してしまったその情熱の激しさには驚かされる。下巻へ。
2019/03/22
しろうさぎ
あちこちの歴史小説や映画に登場する女性なので、一度生涯を通して読みたくなって。それにしてもロマンチックなイメージを蹴散らす、情け容赦なく辛口の評伝だ。彼女のファンにはおすすめできない。危機に際しては男性顔負けに怜悧で勇敢な素早い行動が取れるのに、平時はただの無分別な恋愛体質女。その両極端ぶりが誇張して語られるので、時折「いくらなんでも決めつけ過ぎだろう」と独り言ちたくなる(特にボスウェルとの馴れ初めあたり)。彼女と並び立つエリザベス1世も散々な言われようだ。両国共に登場人物が全員胡散臭い。下巻に続く。
2021/08/27
感想・レビューをもっと見る