ロマンティックな狂気は存在するか (新潮OH文庫 42)
ロマンティックな狂気は存在するか (新潮OH文庫 42) / 感想・レビュー
青蓮
「狂気」という言葉が持つ様々なイメージを精神科医の立場から一刀両断した本。「狂気」というと何かグロテスクで劇的で純粋、憧憬すら誘うものだが実はそんなものではなく単なる精神における代謝物で幾つかの精神疾患の類型に収束されるものであると言う。様々な精神疾患のエピソードは自分と外界(現実)との辻褄を合わせるために出現する現象であると別の本で読んだような気がするのだが、第6章「文学的好奇心をそそる精神症状」を読んでなるほどなと腑に落ちる。
2019/08/14
白義
「そんなもんねーよバーカ」という著者の嘲りが聞こえてきそうなほど狂気神話を徹底的に解体していて「狂気」というものについて何かしら言及しようとするなら間違いなく必読の本だろう。正常と狂気の境界の曖昧さ?境目が曖昧でも別に医者は困りはしないしはっきりした狂人はわかる。狂気の創造性、芸術性?とんでもない。狂人の紡ぐ物語は一見突飛に見えても実は全部型通りで貧困な代物でしかない。狂人は自分の物語や発見を温め成熟させることが出来ないから短絡的な発想しか持ち得ない。狂人や狂気だのに夢を持つのはやめなさいと実に真っ当な本
2016/11/13
hikarunoir
結論から言えばない。少しだけ甘く期待していたが裏付けられた感じ。無論当人が辛いので、周囲を感動させる様な圧倒的狂気にならないのも仕方ないが。
2024/04/13
hit4papa
詩的な創造性という狂気のイメージ。それと同時に我々が抱く狂気への恐れ。著者は狂気のもつ多様性について注意を喚起していきます。狂気という表現の曖昧さは、確かに天才的とか破天荒とかの文脈でも使ったりするのですから。いくつかの症例や、様々な文献を用いて、バッサバッサと切り捨てながらこの点について論を展開します。 著者の語り口に(多少)毒を含んでいるので、これを不快と感じるか、痛快と感じるかで本書の評価が変わってしまいそうですね。
まるめろ
独り歩きしている「都合のいい狂気」というものに、実際に日々触れている作者が警鐘を鳴らす。ややこしいこともなくすんなりと読める。理解できないものは恐ろしく、そうでありながら雁字搦めの自分から解放されるのが羨ましい側面もありそう。
2020/03/17
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