あなたの呼吸が止まるまで
あなたの呼吸が止まるまで / 感想・レビュー
🐾Yoko Omoto🐾
島本作品初読み。主人公は12才の少女、野宮朔。大人の世界を覗くにはまだまだ未成熟で、かといって何も知らない子供でもない。いわゆる性的な行為は、まだ憧れや恋に直結しておらず、好奇心の対象ではあってもリアルに変われば恐怖でしかない出来事だ。寂しさや無防備を異性の大人へ晒す危うさと、思春期に差し掛かった年齢の多感で繊細な心の機微が、大人と接する機会の多い少女の目線でリアルに切り取られた秀作。彼女はその出来事を一生忘れることはないだろう。だが、その傷を思い出さなくなるような出会いが、未来にきっとあると信じたい。➡
2016/09/15
優愛
大人なんかじゃない。大人びた子供なだけで朔はまだ子供なんだって誰か気づいて――鹿山さんみたいになれたらよかった。思ったことは正直に、嫌われることは恐れずに生きていくその姿に朔は、私は憧れたんだ。まるで正反対の性格が羨ましくて。我儘を言いたい、まだまだ普通の子供だったから。そんな朔の優しさと寂しさにつけこんだ佐倉さんを私はきっと一生許せない。「いつか佐倉さんとの話を書きます」朔の夢は物語を書く事。あなたが負い目を感じながら生きていく未来を書くことが私の復讐の形だ。逃がさない、この傷の痛みを分け与えるまでは。
2015/02/17
ふぅわん
【自分の大事なものを相手に大事にしてもらえる人に出会えたら】朔、幸せになってほしい。父子家庭12歳少女。大人っぽいけど少女よね。この人だったら分かってくれると思った男は未熟な男。犯罪よ。性問題は親には言えないよね、朔はしっかりしすぎてて成長後が心配になる。タイトルの意味は、復讐だったのね。恋愛物かと思ってたのに。中身は全く違って想像できなかった。心が凹んでしまう内容。トラウマになっちゃってるもん。大人になるころ、朔自身を朔の大切にしたいものを一緒に感じ愛を感じられる人と出会ってくれてることを祈りたい。
2019/06/19
misa*
舞踏家の父と暮らす12歳の少女の朔。夢は作家になること。一歩一歩大人に近づいていく彼女の前に現れた突然の悲劇、キズ。大人びた朔の心の揺れやバランスを失いかけそうな危うさは、思春期独特の匂いがした。まさに島本さんが得意としている描写だなぁと感心しちゃう。朔が夜一人でノートに物語を描く姿は、島本さん本人の経験からよるものなんだろうな。彼女も何かの番組で、そんなことを話してたし。
2019/01/14
優希
繊細で幼くて大人びている朔ちゃん。父親と二人で暮らしているので自然と大人とのふれあいも多かったのでしょう。大人の世界を見ながら学校生活をおくっているのが危うく見えました。そして突然の暴力。言いたくても言えない心につけこむ大人は汚く思えます。性に対して嫌悪感しか抱けなくなりますよね。人生を狂わせながらも何も気づかない加害者がいるのはとても腹立たしいことです。朔ちゃんはもう大人に甘えることはできないでしょう。悲しくなり、自分も傷を負ったような痛みを感じずにはいられませんでした。
2014/12/30
感想・レビューをもっと見る