人生の踏絵
人生の踏絵 / 感想・レビュー
アルピニア
遠藤氏のキリスト教文学に関する講演をまとめたもの。特に「文学と宗教の谷間から」の章では、作家の視点での文学評論が展開されていて、とても興味深かった。氏がずっと考え続けていたという「弱虫」と「強虫(氏の造語)」の問題が心に響くのは、私もまた弱虫だからだ。憐憫になびく弱虫。しかし「憐憫」は「愛」ではなく「逃げ」だと氏は言う。さらに信念を貫いた「強虫」には懊悩はないのかと問う。憐憫の肯定、あるいは信念の賛美では終わらせず、さらに心の深みへと潜っていくのが氏の作品なのだと思う。また「深い河」を読みたくなった。
2022/07/23
Gotoran
”狐狸庵先生”こと、遠藤周作がキリスト教文学について語った講演を収録した講演集。自身のいくつかの作品や国内外の様々な作品を紹介しながら、文学と宗教、人生の救済と奥深さをユーモアを交えて分かりやすく語られている。紹介されている数々の作品は、どれも紹介の仕方がとても興味深かった。読んでみたいと思わされる作品が多々見つかった。まずは、未読の『ルーアンの丘』、『侍』から読んでゆきたい。
2022/04/16
あきむら
生前の講演を文章で読んでも、面白そうで聞いてみたくなりました。また遠藤周作を読んでみようかと、「沈黙」を読み始めました。
2017/04/01
trazom
作家が死んで20年たって、こんな「新刊書」が発行される。新潮社が主催した遠藤先生の講演を集めた本だが、これがなかなか、深くて重い。「外国文学とキリスト教」の講演を読むと、遠藤先生が、小説家として、どれほど深く文学を読み解いておられたのかがわかる。この人は、こんなにいっぱいのことを考えて小説を書いていたのだと、改めて、思い知らされる。
2017/04/06
jorge70
うん、新しい世界に触れた気がする。「沈黙」をはじめとしたキリスト教思想の濃い小説についての講演会集。唇を噛み、人は皆人生の踏絵を踏んでいる。それに抗うのは立派なことだが、その拘泥により道を踏み外すこともあるだろう。些細なことだが、正月に食べる雑煮へのこだわりはよく聞く。餅は丸、汁は透明、具は鶏とほうれん草。海外に住んでも日本人は染みついた習慣から簡単には抜け出せない。自分にも気づかない自分がいる。小説家は迷いに迷っている人間。迷いがなければ小説を書く必要はない。
2017/05/13
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