芥川龍之介短篇集
芥川龍之介短篇集 / 感想・レビュー
ケイ
村上春樹の英訳で有名なジェイ・ルービンにより、企画段階ではペンギンクラシックスに入る初近代アジア作家のもの(実際にもそうだったか不明)。ルービンによる序文のみ日本語への訳。構成は、一部は平安、二部は武士の時代、三部は近代、四部は芥川自身の物語と独特だ。有名な作品は一部と四部にあり、二部と三部には初読の話が多かった。踏み絵に伴う心の変化を描いた『おぎん』には和洋の良心の違いをよくもこうもうまく描いたものだと敬服。芥川の物語は日本と結びつけずとも自分に思考を促し感心させたとのルービン氏の言葉は感慨深い。
2014/11/25
ベイマックス
久々の芥川作品。旧仮名遣いって直したらダメなのかな😫読みやすい方が手にする人も増えると思うんだけれども。作品としては、そりゃ読み応えあるんだし。読書って娯楽なのに、勉強みたいになるから苦手になっていく気が…。村上春樹氏の『序』も、いやいや堅苦しかった。村上春樹氏があげる「国民的作家」が、芥川龍之介・夏目漱石・森鷗外・島崎藤村・志賀直哉・谷崎潤一郎・川端康成・太宰治・三島由紀夫で、あと1人はなかなかな思いつかなとのこと。条件の一つに、死後25年ぐらい時の経過が必要との認識のようで、いつの日か、ご本人も…。
2021/05/12
nobi
目次の第1部は「さびれゆく世界」第2部「刀の下で」と、それだけで視覚的な世界が広がるよう。続く解説も村上春樹の序も芥川の作品から人生まで深く熱く語り、本宮の芥川の作品に至るまでの参道で気持ち高まる感じ。全編重苦しくやるせない第3,4部と対照的に第1,2部は古代の人々の空想力の高みを現代に蘇らせる芥川の凄みを感じる。八編それぞれに個性的。「地獄変」は終幕の悲劇が分かってなお絵師良秀の筆による如く描かれて行く妖気漂う艶やかな情景が繰り広がる驚き。「尾形了斎覚え書」は悲痛な叫びをも文語体で表現しうるという驚き。
2023/12/29
雪月花
芥川龍之介、夏目漱石、村上春樹などの作品を多く英訳したジェイ・ルービンが秀逸とする芥川の短篇が18篇入っていて、村上春樹氏の序文も興味深い。学生の頃に読んだ「羅生門」「蜘蛛の糸」「藪の中」などを久々に再読すると、改めて芥川が海外でも好んで読まれている理由にその普遍性や人間観があることに納得する。「地獄変」は初読みだったが、非常にドラマティックで映像が目に浮かぶようだった。多種多様な切り口でそれぞれの短篇が描かれ、飽きさせない。何度も読みたくなる短篇集。芥川、凄すぎる。
2022/12/27
キジネコ
整然とした理路を作に表現するが、相変わらず情操に不吉の影。と、批評家に云われて作家は気を病む。唐突に発狂した母の遺伝子の芽吹く時の訪れを怯えて待ち、あらゆる事象の表裏、脈絡に愛憎を投影せずにおけぬ自身を憎悪し、天命の如く他を圧する才気の自覚を疑わず、夭折の宿命を知らせる死神の足音の幻聴を聞く。最早対話するに値するのは彼にとって神のみだったのか。自死の時、既に発狂していたとの伝もありますが、均質に馴らされた凡夫たる読者にとって、常軌を計る尺度こそ幻影。せめて作家が仰ぎ見た星々に塵芥刹那の吾生涯の意味を問う。
2016/01/26
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