神の棄てた裸体: イスラームの夜を歩く
神の棄てた裸体: イスラームの夜を歩く / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
貧困や孤独、戦争、生まれ持っての性と心の違いなどの理由でイスラムの戒律や価値観を逸脱せざるを得ずに身をひさぐ人々。それでも彼等、彼女等は現実を理解し、立派に生きている。彼ら、彼女らを哀れだと思うのはあまりにも傲慢な考えである。そして戒律などに縛られる彼等、彼女らの行動を非難できる資格もなければ最後まで面倒を見ていくことは困難だ。嘘をつけずに真実を言うことも一時的に救おうとする心までも彼等、彼女らの希望を潰すことに他ならないという現実がある。
2011/09/21
しろ
☆7 だいたい予想通りで承知済みとはいえ実際にノンフィクションとして目の当たりにするときついものがある。世の中には上には上がいるし下には下がいる。僕たちが日ごろ目にする世界と違う世界もあることを痛感した。シェイクスピアか誰かが「幸せの形は一様だが不幸にはそれぞれある」とか言ってたけど、それは暮らしのレベルが一定の場合に限る。僕たちから見て明らかに不幸でも彼らには幸せ、という状況に著者も戸惑ってたと思う。まあ、幸せというよりは「まだまし」というだけなんだろうけど。やるせない、この一言に尽きる。
2011/06/20
さくちゃん
イスラム教の国における性の在り方を追ったルポ。貧困や紛争によってもたらされたあまりに過酷な現実にはただただ衝撃を受けた。と同時に、彼らをどうにかして救いたいと思う一方で結局は何もできず自分は無力でしかないという著者の言葉が印象に残った。
2019/07/17
ウメ
頁をめくるのがつらくなる場面もしばしば。私は世界に対して無力だけれど、知らなければ何も始まらない。安全地帯でただ本を読むことしかできない無力な存在だと認識するのにも、意味があると思いたい。
2013/01/22
ジョニーウォーカー
遠い異国の地で暮らす寂しさから人の温もりを求め、道行く男たちに無料で口淫をほどこす歯抜けの醜女。家族を養うため断腸の思いで体を売る兄。その兄に少しでも負担をかけまいと自らも密かに体を売っていた弟。子供を産めないという理由だけで夫から家畜同然の扱いを受ける妻…。厳しい戒律の支配するイスラム世界である種タブーとされてきた“性の問題”に、これほどまで深く切り込んだノンフィクションがあっただろうか。2009年いきなり年間ベスト本にぶち当たったような衝撃作。
2009/01/06
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