蛍の森
蛍の森 / 感想・レビュー
yoshida
ハンセン病患者への根強い偏見、差別、暴力。この国の暗部を世に問う作品。自分の無知を思い知る。敢えて差別用語そのままに感想を書く。癩病は成人への感染力は弱い。明治以降、癩病患者を療養所へ隔離する政策をとる。隔離から逃れる為、お遍路する癩病患者はヘンドと呼ばれカッタイ寺と呼ばれる山奥のコロニーで共生する。近隣の村人は無知と偏見から癩病患者を忌み残酷な事件が起き続ける。虎之助への村人の残酷さ。小春への村人の仕打ちと、療養所での残酷な毎日。ハンセン病について我々は知らねばならない。多くの方に読んで欲しい作品です。
2019/06/02
AICHAN
図書館本。凄まじいものを読んでしまった…。人里遠い四国の山村。その村の脇には遍路道が通る。その近くには癩病(ハンセン病)の患者たちが通る別の遍路道(カッタイ道)があり癩病患者たちが集う荒れ寺(カッタイ寺)があった。ハンセン病患者差別が落ち着いた現代、不可解な事件が続けて起こり、60年前の山村との関連が解き明かされていく…。ハンセン病患者や障害者がいかに差別されて生きてきたかをあらわにした衝撃の作品。初っ端からぐいぐい入り込んで読んだ。フィクションとはいえ事実をもとにしているとしか思えない作品だった。必読!
2019/05/25
すこにゃん
貧困と差別と病気と性と望まれぬ妊娠、著者の扱って来た様々なテーマを基に構成されたミステリー小説です。昔から人間社会には国籍や部落だけでなく病気や障害でも差別がありました。本書はフィクションですがハンセン病と四国遍路のつながりが描かれており衝撃的な内容です。物語の中で展開される執拗に残虐で陰鬱な過去は、世界のスラムを見て来た著者にとっては現在のどこかの姿なのかも知れません。
2014/07/06
モルク
ハンセン病患者を隔離する政策をとる中、それを逃れるため遍路となり四国の山奥のカッタイ寺と呼ばれる所に共同生活をひっそり営んでいた。しかし近隣の村では彼らをヘンドと呼び忌み嫌い、見つけると残虐な行為を繰り返していた。ヘンドの虎之助と小春そして村から逃げてきた乙彦を中心とした1952年頃の話と、60年後の新たな神隠し事件をめぐる話が交互に描かれる。ハンセン病の裁判でその隔離、偏見は知っていたが人として認められずこんなにも差別されて生きてきたなんて。辛い日々、何度もうけた仕打ちの数々に言葉を失う。お勧め作品
2020/04/27
あすなろ
癩病を描写した、史実に忠実なら驚愕の小説。小説と書いたのは、僕自身がどこまで史実なのか反復出来る材料を持ち得ないから。そもそも、作中にもあるが、癩病とかハンセン病とか分からない方も多いのでは。僕自身もお見かけしたことない。しかし、この病気への執拗な差別は我が国ではついこの間までの事実。松本清張氏の砂の器とその映画の加藤剛や様々なシーンを思い起こした。とにかく衝撃的作品であったことは間違いなし。読み進めるのが辛く重いが、頁を捲ることをやめられない。
2014/11/26
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