馬たちよ、それでも光は無垢で
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馬たちよ、それでも光は無垢で / 感想・レビュー
さっとる◎
当たり前のように物語を書いてきた。ただ書きたいから書いてきた。それができない。福島がFukushimaになったあの日から。なぜ私はこちら側でのうのうと生きている?時間の感覚を失う中でただ声だけがする、そこへ行けと。書けなくなった福島出身の小説家が震災後の福島を見る。誠実な言葉が行き場のない怒りと哀しみと涙を誘う。書けなくても書く。その姿が重たく苦しい。それでも聞こえる、物語がいるんだろ?って。誠実な記録を物語が侵食する。でも、それも小説家古川日出男の現実なのだ。本当に本当の小説家だな、と思う。
2017/06/17
とら
2011年3月11日―すなわち東日本大震災が起こった日。でもこれはそれ以後、”神隠しの時間”を経てからの、4月11日または5月12日の物語…いやそれとも、それ以前の物語なのかもしれない。正直何が現実で何が妄想なのか区別がつかなったし、これは本当に古川さんが思ったことなのか、行動したことなのかもわからなかった。もしそれが本当に起こったことならば、この本はエッセイになるし、でも文中で”物語”にもなると言っていて…結局わからない。でも一気読みだったから、何か惹かれる所があったのかもしれない。「聖家族」読みたい。
2013/11/16
なゆ
震災から一ヶ月後、福島に向かった著者。ルポタージュのようでありながら、東北を舞台に書かれた『聖家族』の登場人物が出てきたりして小説でもあるような複雑な構造。福島県中通り地方に生まれ、そこを出た自分がどうしたら苦を共にできるのか?何をすべきか?といった、古川氏の煩悶の軌跡。この混乱した思考、言葉を失う感じ、失われる時間や日付の感覚、そういうとりとめのなさこそが、あの時期だったのかもしれない。
2014/03/22
ソングライン
東日本大震災の起こった3月の末、福島県郡山で育った作者は、何者かに引き寄せられるように、編集者3名と被災地福島に向かいます。福島第一原発の北にある相馬、南に位置するいわきから出来るだけ原発に近づくように海岸を移動する一行。短くも秘められた感情が発散されるような文体で描かれる被災地、700年の間、武士や相馬の人々を支えてきた馬たちの見てきた数々の戦いと災害、そして作者の小説「聖家族」の登場人物が語る東北への想い。震災から1か月で書き始めた作者の思いが、重く心に響く1冊です。
2019/02/24
磁石
これはエッセイでいいのだろうか、手当たり次第自分が感じたこと/思いついたことを詰め込んだような、でもソレが小説のようになって、異空間にトリップさせられるような引力が生まれている……。かの3・11の震撃に古川日出男はどう揺さぶられたのか/飲み込んだのか、あるいは変わらないのか、混濁し溶け合った末に生まれた。相変わらず枠にはまらなすぎる。
2017/09/10
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