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曼陀羅華X

曼陀羅華X

曼陀羅華X

作家
古川日出男
出版社
新潮社
発売日
2022-03-15
ISBN
9784103060796
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ジャンル

曼陀羅華X / 感想・レビュー

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ぐうぐう

「私たちの東京は静かだ」この一文から本作は始まる。オウム真理教を扱った本作が、サリン事件のあった1995年から2004年を舞台としていながら、まるでコロナ禍を思わせる一文から始まるのは、この小説が「 オウム真理教とはなんだったのか」を描いた作品ではなく「オウム真理教とはなんなのか」こそを描いていることを端的に象徴していると言える(DJXが実況中継するラストの章は、まさしく現在進行形を意味しており、かつ、DJXの登場は古川日出男が完全訳した『平家物語』との連続性も連想させる)。(つづく)

2023/10/19

さっとる◎

あれは何だったんだろう。そしてこれは何なんだろう。人があまりに本気であるのに触れたとき、同調してしまえば恍惚にも似た幸せを感じるし、そうでなければ狂気や滑稽さを見、その先で恐怖に近い感情が生まれる。宗教がなくても予言書は書かれ得て、昭和が平成に、それと同時並行で世紀末がカウントダウンされる時間軸は、両立していそうでちぐはぐなようで交差してそうで同じなようで。あのお方が奪還された世界線は現実感を欠く、だろうか、あんなことが起こった現実の現実感はじゃあどうだ?わからないから考え続ける。十字架を傾げる想像力で。

2022/04/17

marco

読書中、元首相が、祖父の代からつながってきたカルト教団による犠牲者によって射殺される事件が起きた。著者は自身のサイトで「相変わらず私は予言的に創作物を出してい」る、と書いており、カルト教団の問題が前景化してくることを見越していたかのよう。連載時にあった教祖の名をフセることで、問題を普遍化させ、事件の風化を妨げつつ、この時代、心の問題が前景化してくることに、われらのカーソルが向かうよう仕向けた。その脅威におびえたり、黙って受け入れたりするのではなく、「お前の運命をデザインしろ。」とのメッセージを受け取った。

2022/07/31

踊る猫

J・G・バラードが描くカタストロフや、あるいはチャック・パラニュークが現代世界に注ぐ冷徹な眼差しを連想させる。もちろんスティーヴ・エリクソンの想像力とも共振する(彼らのルーツを辿っていけば、この本でも特権的な名前で登場するフォークナーにたどり着くだろう)。しかし、そうした先人たちと比べれば古川日出男は実に軽妙に、それこそDJのように現実世界の歴史と想像の世界を、その熟達した筆でミックスさせ繋いでいく。ただ、その想像力を裏打ちしているのは古川の真摯な「語ること(=『(物語を)産むこと』)」への情熱かと思った

2022/04/07

rosetta

★★★✮☆誰が読んでも面白い本かと問われると答えに困る。文体に強烈な個性があるから好きな人はハマるし、苦手な人はダメだろう。自分には心地よい。取り扱われているのは基本的にはオウム事件。逮捕された教祖は奪還される。二代目を生まれさすべく五人の少女に受胎のイニシエーションが授けられる。最初の子を身ごもりその後教母と崇められる一人の女性。教団に拉致られ黙示録を書かされた作家が最初の二代目を奪い我が子として育てている。現実と想像が入り乱れラジオDJが跳ね回る。言葉が足りなすぎるけどファンなら試しに読んでみなさい

2022/05/21

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