アカペラ
アカペラ / 感想・レビュー
aoringo
読後感がビターな味わいの三編。おじいちゃんと駆け落ちした15歳、顔だけは良いけどダメダメな男、幸薄いことが身についている姉弟。それぞれ違った味わいがあり、その先が知りたくてたまらなくなった。エッセイでの恋愛、結婚観が自分とは合わないなと思っていたのだけど、やっぱり小説は面白くて惹き込まれる。もう新作を読めないというのが本当に残念です。
2023/07/10
ふじさん
表題作「アカペラ」は、血の繋がらない祖父と健気な中学生の孫との触れ合いを温かな目線で描いた作品。「ソリチュード」は、父親と合わず高校中退して家を出た息子が父親の死をきっかけ20年ぶりに実家に帰ってきた駄目息子の顛末を描いた作品。「ネロリ」は、無職で病弱な弟と暮らす50歳独身の姉の終活と結婚の顛末を描いた作品。輝き過ぎないように、明日に期待し過ぎないように、静かに生きている人々の人生を描き、温かな気持ちと深い共感を呼び起こす感動の物語。普通に生活を送ることが、どんなに特別なことか教えてくれる。
2024/10/07
konoha
再読。山本さんの文章がやっぱり良い。主人公の語りにグイグイ引き込まれる。表題作は、中学生のタマコと今時イケメンの担任の掛け合いが最高。好きな場面がたくさんある。「ドロップアウトしたのはセンセーの方」なんて子供は鋭い。祖父との恋愛に嫌悪感を抱く人もいるかも。「ソリチュード」は帰郷したダメ男と過去の女、今の女。元恋人、美緒の娘、一花とのやりとりが微笑ましくも切ない。寄り添って生きる姉弟の「ネロリ」は展開に驚く。ほろ苦く、ピリッと辛く、でもキラキラと輝く。本質を的確に捉える作者のセンスの良さを感じる。
2022/04/12
もりやまたけよし
久しぶりに山本文緒の話を読んだ。いつもながら、とても面白い。社会生活を営むにあたって、不器用な人たちが出てきて、不思議な恋愛ドラマが展開される。アカペラのおじいちゃんとタマコさん、ソリチュードの美緒と一花、俺、そしてネロリのヒデチャン、ココア、お姉さんと須賀。本当に個性豊かな楽しい人たちで、どの人も嫌味というか毒がないのが特徴だ。ここちいい感覚が、読後に残る。
2013/03/28
キムチ
アカペラ~じっちゃん、たまこ、父母、教師の関係性は何と言うのか、嗤い❓ペーソス❓空虚な風が吹いているだけと感じたのは私が時代錯誤なのかも。ポンポン投げてくる会話に楽しさを見いだせず。ソリチュード~俺、美佐緒・・透明とやらの静観が茫漠とし過ぎて何かなぁ~但し、スナフキンのイメージはあり。ネロリ~いい歳した姉弟、そしてココア<感受性200%〉志保子と須賀。視点が次々と転じて行き、ふ~わふわ上がる風船ゲームみたいで、水彩画の世界。「このままでいさせて」・・とろとろにあったかいというが好きじゃないな、この世界観。
2015/11/01
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