草原の記
草原の記 / 感想・レビュー
がんぞ
前半は「欲望少ない」遊牧の爽快を絶賛「農業は大地を傷つける」。みどり夫人は「星を見ながら寝たい」願望が従来あったがパオの空気取り穴から確かに見えた。なんと五台山にラマ教僧が居て。『街道をゆく』モンゴル編で著者を案内したツェべクマ女史と再会、ツェべクマはチベット語で花の意。大デュマ小説並の数奇な人生、夫も。敗戦時満州国にいたため日本語を話せる、だけで文化大革命で生命の危険、ソ連領チタに旅行目的で出国、モンゴル共和国に亡命。晩年の著作だけに文革への著者の私見も披露、興味深い。モンゴルでは心友である馬は食べない
2014/05/30
algon
久々の司馬作品。著者がモンゴル語学科卒とは知りませんでした。私もモンゴル好きでモンゴル舞台の映画もよく見ます。この国の地理的文化的状況、立国の経緯などの説明から草原で出会う案内通訳をしてくれたツェペクマという女性についての背景が主題。中国、ロシア、蒙古三国にまたがって歴史に翻弄される数奇な生涯を紹介している。相当な知識人でありながら渇いた感性で語る人生の歩みを知らされるとさすがに胸を打たれました。「私のは希望だけの人生です」相当に重い言葉でした。紙が厚く懐かしい思いがする書籍でした。
2016/05/19
JFK
感受性が高いと見落しがちな事でも、たのしいのだな。 紋切り型で見てしまうモンゴル人も、その他気候と風土が気質を作っている。 名前がラマ教の営業所を受けているとは知らなかった。
2017/05/03
椎茸どんこ
旅は人を思慮深くさせるものなのかもしれない。数奇な人生を歩んだ一女性との出会いが作家の想像力を掻き立て、モンゴルの草原を駆け巡らせた。 もう何十年も前のことなのに「先の」大戦と、このときの戦後体制は未だ健在だ。叩いたことは忘れても叩かれたことは忘れない。良き関係を築くには叩いてしまったことを忘れないことだ。「解決済み」は被害者のみが言えるセリフだろう。 司馬さんが愛したモンゴルの、天と草原がこの世界を二分する景色を見てみたいと思った。
2024/02/18
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