地球星人
地球星人 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
芥川賞受賞後の第1作。『コンビニ人間』とは大きくその趣が変わる。おそらくこの人は、自身の中に物語るべき種をいくつも内包しているのだろう。ただ、前作との間に通底性がないわけではない。自己と世界との違和=意思疎通の不可能性がそれである。奈月(物語の語り手)は、そのことの故に自分を「魔法少女」に仮託する。相棒であり、彼女が唯一信頼できるのはぬいぐるみのビュートだけである。そして、彼女の彦星のような恋人の由宇。彼らの子ども時代の物語はひたすらに一途で、その一途さゆえに哀切なトーンに彩られる。⇒
2022/06/02
starbro
村田 沙耶香、3作目です。芥川賞受賞第一作、近未来洗脳妄想青春小説、地球星人VSポハピピンポボピア星人でした。ポハピピンポボピア星は、M78星雲辺りにあるのでしょうか(笑)国策(人間工場・・・少子化対策;産めよ増やせよ&一億総活躍社会)批判小説なのかも知れません。本書は、今年のBEST20候補です。【読メエロ部】
2018/09/19
ウッディ
母親から否定的な言葉をぶつけられ続け、自分はポハピピンポボピア星から来た魔法少女だと思いこんだ主人公の奈月。祖父母が住む田舎で自分を理解してくれる従兄弟の由宇と秘密の関係を結ぶ。人間は生殖部品で工場の一部であるという考えに洗脳された社会の中で、塾講師から受けた性的ないたずらにより、自分はまともに恋愛もできない出来損ないの部品だと思い込む奈月の未来は?気持ち悪い、怖いと思いながらも頁をめくる手を止められず、彼らの言動を妄想だと切り捨ててしまえないのは、それが自我を護る唯一の手段なのかもしれないから・・・。
2019/01/22
抹茶モナカ
カフカが「世界と自己が衝突する場合、常に世界の側につけ」という趣旨の言葉を残していたように思うのだけれど、この作家の設定する世界に対する自己の異物感は徹底して世界に対して戦うに至る。この小説では、徒党を組む事までしてしまう。どう着地するのか、最後まで読み通してしまったのだから、作品として力があるのだろう、とは思うものの、知的好奇心より怖いもの見たさの感覚が強いような。この作風を掘り下げて行っても、深さ、重厚さとは別のものになりそうな、作家として痩せて行くような気がする。ほぼグロテスクな漫画のような本。
2018/09/18
absinthe
沙耶香様がまた凄い話を・・・。捕獲して工場に取り込み洗脳しようとする陰謀組織と逃れたいが捕まってしまいたい複雑な心境の自称宇宙人達の話。等と書くと誤解されるか?ある人が見れば機能不全夫婦。ある人が見れば愛にあふれる仮面夫婦。してその実態は?沙耶香様の切り口が冴え渡る。虐待に関する幾つかのエピソードは目を背けたくなるが、これもまた現実だ。これからの夫婦というのはこういう形が普通になっていくのかもしれない。『コンビニ人間』以上の出来かも。
2019/09/06
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