そうか、もう君はいないのか
そうか、もう君はいないのか / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
僅か156Pの中に溢れんばかりの妻への思い、感謝がこれ以上ないくらいビッシリと綴られており、一言では絶対に言い表すことのできない感動があります。著者と妻との出会いから死別までの半世記ですが、とにかく妻「容子」さんが明るく、常に前向きでアタマが下がります。奇跡的な再会もドラマチックですが、常に2人寄り添って人生を共に歩んでいく姿は読んでいて、ジンワリと胸がうたれました。ページをめくるたびに伴侶の偉大さ、大切さを感じさせてくれます。妻が最期を迎える記述は涙なしには読むことができず、夫婦の強い絆に涙しました。
2015/05/21
青乃108号
城山三郎の名は知らなかった。社会派小説の書き手として、直木賞他の受賞歴を持つ作家の遺稿を、彼の死後に娘さんが纏めて出版された作品。彼の妻との出逢いから文壇デビュー、色々あってやがて訪れる最愛の妻との死別。妻亡き後の喪失感が胸を抉る。妻との想い出の詰まった自宅にはとても居られず、晩年は仕事場で生活を送った彼の気持ちは痛い程判る。俺もとてもじゃないけど耐えきれない。妻に先に逝って欲しくない。妻は言う、生きる事に執着はない。死んだら海に散骨して欲しいと。考えたくもないけれど、いずれ近い将来、どちらかが先に逝く。
2024/11/01
黒瀬
直木賞作家・城山氏が綴った妻への愛惜の回想記。私小説と言うべきかエッセイと言うべきか。ちょっと天然でお転婆な可愛らしい奥様との日々が決して堅苦しくない文章で記されており非常に読みやすい。かと思うと回顧する年代が最近のものになるにつれ徐々に悲壮感溢れる筆致に。「静かに行く者は健やかに行く 健やかに行く者は遠くまで行く」 晩節を汚す人物が多い現代人の心に刺されたし。
2021/03/08
馨
城山さんにとっての容子さんの存在がとてもかけがえのないものであり、他の作品の素晴らしさは容子さんの存在あってのことであったことを実感した。
2012/12/16
エンブレムT
半生を共にしてきた最愛の伴侶。隣で笑い眠るその存在が当然であった日々。その不在に慣れることが出来ないまま過ぎていく1人の時を、サラリとした語り口で綴っています。「そうか、もう君はいないのか」そのつぶやきですら独り言ではなく、亡き奥様への語りかけであることに気付いた時、涙腺が決壊してしまいました。娘さんのあとがきを読んだら、更に涙がとまらなくなりました。
2010/05/10
感想・レビューをもっと見る