仮想儀礼 下
仮想儀礼 下 / 感想・レビュー
財布にジャック
上巻ではとんとん拍子に教団が大きくなる様が描かれていたにも関わらず重苦しい印象を受けたのは、下巻のこの展開が予想されて、嫌な予感がしていたからだったんですね。主役の二人がどこにでもいそうな普通の男性で、悪意が感じられないのがせめてもの救いですが、それ以外の信者の女性達の狂気には、参りました。しかし、上下巻で更にこの厚みなのに、飽きることなく最後まで読ませてくださった篠田さんは本当に素晴らしい作家さんだと思いました。
2011/02/14
オカメルナ
これは「凄い!」としか言いようがない。上巻読了後に想像していたストーリーでは全くなかった。確かに大きくなった組織としては崩壊したけれど、宗教は団体の大きさなんて関係ないんだね。清泉真法会にどんどん傾倒してゆき狂気さえもはらむ信者の様が本当に怖い。ホラーでもオカルトでもないのに、人間はこんな風になり得てしまうかもしれない恐怖が、これでもかこれでもかと文面に現れる。結末も見事で篠田さんの力を見せつけられた。展開が気になりすぎて一気読み。でも、ものすごく疲れた。しばらく宗教がらみはご遠慮しますという気分。
2012/03/18
harass
教団は世間的な大ダメージを受け信者が離れていく。税務署が動き、莫大な追徴金を求められ、活動資金は底をついてしまう。下巻の始めでこの展開かと驚きつつ読んでいく。ここから作者が一番書きたかったことかと納得。ごく少数になった信者たちは先鋭化し、教祖の主人公たちは困惑し、彼女らの暴走に巻き込まれる。偽物の教祖は、本物の信者を生み出したことに、恐怖を覚える。絶望的な逃避行の末は…… 根源的な宗教というのは、必ず世間と敵対してしまうとなにかの本で読んだのを思い出した。途中ダレるところもあるがお勧め。
2020/08/12
けい
正彦と矢口の二人で立ち上げた「聖泉真法会」が辿る転落劇が描かれる下巻。世間から批判を浴び、どんどん内へ向かって行く、熱心で帰って行く場所がない女性信者達。教祖としてどうにか彼女たちにブレーキをかけようとする正彦であったが・・・。破滅へ向かって行く狂気が篠田さんのスピード感ある文章で描かれ、ページをめくる手が止まらない。読み終えてやっと一息。上下巻で900ページを越える大作でしたが、本当に面白かった。おすすめ頂いた、読友さんに感謝です。
2013/12/16
RIN
上巻末では、ステロタイプな新興宗教モノへシフトしそうな気配があったものの、そこはさすがの篠田節子氏。こんな展開になるとは茫然…。彼女たちにとって、すがりつくのは宗教でなくともよかったのかもしれないが、宗教の恐ろしさは一見大義があるような思想が自己正当化を加速させるところと、信仰が深まれば深まるほど抜け出す理由を見つけにくくなるところだろう。最近はあまりニュースに取り上げられなくなったが、過去にクローズアップされた宗教の中にもこんな内実のものもあったかも。マスコミもコメンテータも学者も一度読んでみてほしい。
2011/10/26
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