長女たち
長女たち / 感想・レビュー
ヴェネツィア
3つの長女たちの物語を収録。調査力もそうだが、なによりもその作家的想像力に感嘆する。次々と物語を展開してゆく推進力も見事だ。3篇を通して小説が伝えるのは、一人にできることの限界だろう。また、傍から見るそれと実態との違いを告げてもいる。そして、もう一つのテーマは"死"と向き合うこと、あるいはそれをどう受け入れるかということだろう。それがこの作品集の特徴でもあるのだが、そこで問われるのは自らの死ではなく、近親者が(「ミッション」では人間にとっての)やがて迎えるであろう死との折り合いの付け方なのである。
2018/02/14
みも
『インドクリスタル』読了後、読友さんよりお薦め。「家守娘」116頁「ミッション」84頁「ファーストレディ」73頁の3篇。『長女たち』と言うよりも、娘であり、母であり、キャリアウーマンでありと…むしろ『女性たち』と言うべきか。「ミッション」…突然死した師と仰ぐ医師の跡を継ぐ為、インドの辺鄙な村に赴任する女医。西洋的価値観としての人間の尊厳と、かの地の風土の中で培われた死生観との圧倒的な差異。人命への認識が根本的に異なり、僕自身の人生観が激しく動揺する。確かに『インドクリスタル』と合わせて読めば理解も深まる。
2020/10/26
tama
図書館本 予約して、そこそこの日数待たされた。人気がある証拠。この人の作品は基本、冒頭から不安感一杯、べっとりとイヤ~な感じなのだがこの本もそこは押さえてますねぇ。一番参ったのは最後の作品。日本の怪談話なみのジトジト高湿度。真ん中の作品は、私の近親にかなり厳しい状態の病人がいてそれを思うと山岳地方の一生の方を私自身が選びたくなる。こうなると最初のお話なんかハッピーエンドだよなぁ。全編、大変のめりこんで読みました。
2014/03/26
*すずらん*
母と長女。これ程綿密で厄介で互いの愛憎が交差し合う関係って、他にないのではないか。かく言う私も長女であり、この本を読み進めるのが本当に辛かった。親が老いていくのと同じに子供も歳をとっていく。だから両者の関係性は自ずと変わっていくものだが、母と長女の関係は何故だか柔軟に変化することができない。年をとる毎に二つの異なる言い分や考えが棘の様に吐出し、歪な形を帯びていく。それでもお互いが吹っ切れないのは、やはり根底に親子の確かな愛情があるからなのだろう。故に苦しむのであれば、愛された記憶とは何て罪深い物なのだろう
2014/12/28
barabara
長女は可哀想…何となくそんなく意識を持っている私。今回の一話と最終話は可哀想尽くしだった。出来が悪い下は可愛がられおいしいとこだけ持って行き、何故か実力以上の期待を否が応でもかけられ、成長すると自分に精神的に隷属させられる長女たち…一部分だとは思うが、長女の自己憐憫と怒りの入り混じった感情、損する立ち回りがよく出ていて面白かった。完
2014/03/25
感想・レビューをもっと見る