肖像彫刻家
肖像彫刻家 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
7つの章から成るが、いずれも「小説新潮」に掲載されていたもの。各回、それぞれ半ば独立した短篇といった風でもあるが、一応は連作短篇の長編化といった構成をとる。篠田節子は久しぶりに読むが、これまでの印象では、彼女の小説は多かれ少なかれ社会性を孕んでいたように思う。また、時にせつなく哀切を帯びていたり、あるいは危機感と帯同していたような印象である。ところが、本編にはそのいずれもがなく、あろうことかオカルトっぽい要素までが物語の中核を占めている。これでは篠田節子の小説を読んだ気がしない、という残念な結論に。
2024/02/22
starbro
篠田 節子は、新作中心に読んでいる作家です。いつものシリアスな篠田 節子ではなく、荻原 浩的なユーモアや悲哀のある連作短編集でした。主人公と私は同い年ですが、私の方がかなり真当な生き方をしています(笑)芸術家はつらいよ!
2019/04/16
のぶ
高山正道という53歳のバツイチの男を中心にした7つの連作短編集。ローマで彫刻の修行を積み、芸術家を目指してきたが、その道を諦め、現在は依頼の来た彫刻を制作する、いわば彫刻屋として生業を立てている。そんな正道のところにいろいろな肖像の注文が持ち込まれる、そこに至るまでには様々なドラマがあった。そんな事情をまとめたもので、正道は狂言回し的な役回り。それぞれの話はバラエティーに富んでいるが、コミカルなものやオカルトめいたものがあって面白い。篠田さんとしては軽めの作品集だが、そこそこに楽しめる一冊。
2019/04/21
修一朗
肖像彫刻家と聞くだけで,食べていくのは大変ですよねっていうイメージだ。正道さん,イタリアから帰ってたそがれているのかと思えば八ヶ岳山麓にアトリエ構えられて,肖像職人として仕事や仲間にも恵まれて結構幸せな人生だと思うぞ。篠田さんのお仕事小説らしく,仕事の描写は精緻なうえに肖像に魂が宿るオカルトエピソードやシビアな介護の話 もあって,正明がバタバタ振り回される明るい篠田さんを堪能できました。
2019/04/29
タイ子
篠田作品にしてはユーモラスな作品で面白い。時々クスリとさせながら人生いろいろ感を味わわせてくれる。53歳のバツイチでイタリアに彫刻の修行に行っていた男が帰国。姉にせっつかれ八ヶ岳の麓に住むことに。肖像彫刻作りますの看板を掲げたところで高額な注文は難しい中、村のお寺から妙な注文が来たり、父親の全身像、恋人の裸像だったり、それぞれ作る理由があり、出来上がった作品に魂が宿るというとんでもない事象が面白くて読むほどに人生の悲哀を感じさせてくれる作品。近所のばあちゃんの作る料理が美味しそう!
2019/11/07
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