目玉
目玉 / 感想・レビュー
新地学@児童書病発動中
吉行淳之介晩年の短編集。初期や中期の作品のような密度は欠けているが、この人らしさは健在で楽しく読むことができた。特に過去と現在を自由に行き来する書き方は素晴らしく、独特の伸びやかさを感じた。対象にのめり込まずに、淡々と物事を描いていくところが特徴で、グロテスクになりそうな自分の目の手術を、ユーモアを交えてさらりと描く表題作は特に見事。吉行淳之介は最後までダンディズムを失わない作家だった。
2014/07/12
桜もち 太郎
吉行淳之介の随筆。ほとんどが自身の病気と向き合った作品。面白かったのは「いのししの肉」と「葛飾」。ヤクザと思われる人との長年の付き合いと、世間では評判といわれている老整体師との付き合いを書いたものだ。どちらも騙されているとはわかっていても、そこは吉行さんの人間愛でユーモアたっぷりに書かれている。
2013/08/10
じめる
ほぼ私小説なのかな? しかし話の構成力が尋常ではない。一見するとタイトルになっている話とはズレた話が平然と進行し始めたりするが、それらが何食わぬ顔で主軸と合流してくるので凄い。ページを捲らされる感覚がありすぐに読み終わったけど満足感と余韻は一入。
2013/01/12
志波昌明
吉行淳之介の短編集。表題の「目玉」は白内障にかかった作者が人工水晶体を入れる手術を受ける話。大変なことなのに、淡々と書かれ、周りの人達とのやり取りもユーモラスに描かれ笑ってしまう。目にメスを入れる手術の描写も他人事のように端的に書かれ、読者のほうがよっぽど怖い。解説で川本三郎が書いている映画「アンダルシアの犬」で目が真っ二つに切られる場面を見たときのことを思い出した。腰を痛めて整体に通う「葛飾」も良かった。
2015/01/14
Izumi Yamakawa
この人らしい、独特な文体。作家というのは、すごいなと、あらためて、感じました。
2014/01/03
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