あこがれ
あこがれ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
前半の「ミス・アイスサンドイッチ」(4年生時)は麦(男の子)の視点から、そして後半の「苺ジャムから苺をひけば」(6年生時)はヘガティー(女の子。ニックネームだが、その由来は言うまい)の視点から語られる。全体のタイトル『あこがれ』が表象するように、小学生が未来に託す「あこがれ」と、もはやそれを喪失した作家の憧憬とがそこで重なり合う。したがって、主人公の2人は小学6年生にしては幼い印象である。否、むしろ残された”Purity”を纏っていると言うべきか。そして、そうした感性はいつしか読者の胸に染み入るのである。
2022/05/27
starbro
王様のブランチで紹介されてから、予約したので大幅に出遅れてようやく読めました。小学校高学年の多感な時期の物語、自分が小学生に戻ったかのように感情移入できてしっくり来ました。「ヘガティー」と呼ばれても動じず、「銃撃戦」を愛する小学生女子に凄味を感じます。将来どんな大人になるのか楽しみです。紅茶の匂いのような屁とは食べるとバラの香りのう〇こになる健康食品に通ずるものがあるのでしょうか?
2016/04/01
風眠
もやもやとして言葉にできない想い。的確な言葉で言えないだけで、切なさや理不尽さ、淋しさや別離、といったデリケートなところを、子どもは大人よりも深く感じているのかもしれない。わからない分だけ純粋に、ダイレクトに感じ取っているのかもしれない。生きていく事の深みも、大人の事情も、大人に言えない淋しさも、全部、全部、小さな胸に抱えて、麦くんとヘガティーはこれから大人に近づいていくのだろう。バイバイ、またね、のかわりの合言葉は「アルパチーノ」。それはふたりの魔法の言葉。ほんの少し励まされるような、愛おしいような。
2016/09/02
hiro
『すべて真夜中の恋人たち』以来の久しぶりの長編。川上未映子作品といえば、あの句点がなかなか出てこない独特の文章を思い浮かべ、まずそれを探してしまう。麦くん(男の子)、ヘガティー(女の子)の友達同士の小学生ふたりがそれぞれ主人公となる二章からなる作品。麦くんはサンドイッチ売り場の店員ミス・アイスサンドイッチにあこがれ、一方、へガティーはひょんなこと知った自分の半分だけお姉さんにあこがれ、主人公達はあこがる人に会いに行く。この小学生のあこがれに対する行動が、とうにこんな気持ちを忘れてしまった自分の心に響いた。
2015/11/07
なゆ
なんだか、とても純粋なキラキラしたものに触れた気分。麦くんとヘガティーのおかげで。すごいな川上さん、こんな世界も書いてしまうんだ!麦くんは4年生のときに、ヘガティーは6年生になって、それぞれとても気になる人が現れて、その人に会いに行く。どう言ったらいいのかわからない感情、分け合う不安、一緒に一生懸命に考え合うふたり。ヘガティーの心の成長は鮮やかすぎて眩しいくらい。お母さんへの手紙なんて、涙なしには読めない。ああ、清々しい読後感。中学生のふたりも読めたらな。願いを込めて…じゃあまたね、アルパチーノ!
2016/03/04
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