アニバーサリー
アニバーサリー / 感想・レビュー
風眠
75歳のマタニティスイミング講師・晶子と、有名料理研究家の娘・真菜の目線を通して、戦前、戦後、そして現代を生きる女性の葛藤が描かれる。戦争で何もかも失い、そこから世の中は少しずつ便利になった。豊かさを得たと同時に何かを失くした現代。機能不全家族が増え、寂しさは複雑さを増していく。そして東日本大震災で原発が爆発した。劇的に前向きにはならない、けれど少しずつ前に進もうとする女性達の心の動きがリアルに胸に迫る。「信号が青に変わる。終わっていく世界を」シングルマザーとなった真菜が歩き出すラストシーンが力強い。
2014/01/01
ダイ@2019.11.2~一時休止
おせっかいなマタニティスイミング講師と孤独なカメラマンの妊婦の物語。震災が二人の記念日になり、終わりもイイ感じで面白かった。
2016/02/06
ひめありす@灯れ松明の火
アニバーサリーは日本語に訳するといい意味にとられることが多い。誕生日や結婚記念日、お店の開店祝いなんかで使われることが多い。だけど同時に忌日。祥月命日だってアニバーサリーに成るんだ。どちらも記念日。何かが終わって、そして何かが生まれた日。大勢の命が失われ、犠牲となったその日。新しい命が生まれ、沢山の人が新しい一歩を踏み出したその日。それは二つは二つで一つの、ただの一日なのかもしれない。空に向かってブランコ漕ぐように、毎日はプラスとマイナスの振れ幅を、それでも日常から飛び出さないようにしながら、生きていく。
2014/01/19
文庫フリーク@灯れ松明の火
P309「おれはおまえを尊敬しているよ」この一言にどれほど晶子は報われたことだろう。出産も育児も子育ての苦労も知らぬ身では、せめて夫・遼平のような感謝を表せる人間でありたい。この物語は著者と同年代の女性、もしくは晶子か真菜と同年代の女性が、きつい痛みと共に深く味わえるだろう。そしてあの日‐3月11日妊娠していた女性・子供を持つ母親全ての心‐直接被災はしなくとも、真菜と同じ不安に駆られた女性はどれほどいたことだろう。そこまで思い至らなかった自分の鈍感さを刺されたような。昭和10年生まれの晶子と→続く
2013/04/16
おしゃべりメガネ
久しぶりの窪さん作品で、予想以上に引き込まれて読了でした。戦前から時を経て、3.11東日本大震災、そして現在へとつづられる壮大な「女性の生きざま」に打ちのめされました。様々な友情の在り方、恋愛、結婚そして出産、悲しい別れ、そして生命の始まりと終りなど、あらゆる時代においても時の流れの中でどうしても抗うことのできない人生での出来事を一つ一つ本当に丁寧に感情が溢れんばかりに書かれています。女性が子を生み育てていく大変さ、一方で一人で生きていくたくましさは本当にドラマチックでした。女性の「生き様バイブル」です。
2014/01/19
感想・レビューをもっと見る